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大切な家族、新たなるスタート

「ところでエイデン様……そのお姿は」 ミケルはエイデンの背に乗せられ上空を飛んでいた。 エイデンはレノとの再会を約束し、少しの荷物とミケルを連れて屋敷を出た。 「ん? レノが ペガサスだって言ってた。僕、自分が獣人だったなんて知らなかったからびっくりしちゃった」 「……は? え? 自覚なかったんですか? 」 「うん。突然ね、ミケルが僕じゃない誰かと番になりそうな気配がして、カッとなって気がついたらあの小屋にいた」 「………… 」 無邪気に「いつのまにか馬だった!」と言って笑うエイデンに調子が狂う。 「馬じゃなくてペガサスです……! そもそもペガサスなんて伝説の生き物じゃないか……初めて見たし……てかこんなの見たことある人いないんじゃないか?」 ミケルは一人ぶつぶつと呟く。こんなにも神々しい生き物の背に乗ってしまって大丈夫なのかと心配になる。でもエイデンは初めて会った時と同じに、この上ない程嬉しそうにミケルを見つめた。 エイデンはまだ見ぬ運命の番、ミケルが引き寄せられるようにして自分の前に現れた事で本来の姿に覚醒した。 「僕はミケルが来てくれるとわかってたんだと思う。暗闇も怖くなかったし、感じた光はミケルだってわかってた」 空を翔けながらエイデンは「やっと会えた」と愛おしそうにそう言って笑う。 自分と同じ獣人で、しかも伝説と呼ばれるような存在── そして側にいるだけでわかる「愛されている」という強い実感。 ミケルもまた今まで失われていた自身の欠片を取り戻したようなそんな気持ちに幸福感と深い安堵を覚えていた。 出会った時に僅かに感じた威圧感、そして喜び、愛おしさ。様々なことが思い起こされ湧き上がった。自分の直感のようなものがあの時ちゃんと教えてくれていたのだと、孤独でも一人でしっかりと生きてきて良かったとミケルは思う。 あの時と違っているのはエイデンの瞳がちゃんと自分を見てくれているという事。 エイデンが自分を見つけてくれたという事。 ……そしてエイデンは自分の「運命の番」だと今は確信を持って言えるという事。 もう「ひとり」じゃない…… 旅立ち、人生の新たなるスタート。 大切な家族が出来たミケルはエイデンの背で静かに涙を零し「ありがとう」と顔を埋めた。 end

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