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よくある、失恋の物語

 日誌を職員室に出せば、日直の仕事は終了だ。あとは律儀に待っていてくれている幼馴染に声を掛けて、一緒に帰るだけ。  わざわざ意識する事もない習慣通りにオレは、職員室から真っ直ぐ、自分の教室ではなく、幼馴染の教室に向かった。今年のクラスは離れたけれど、こうしてオレ達は互いの教室を行き来しているから、他クラスの教室に入る時の、何処となくドキドキする気持ちとは縁遠い。オレも、向こうも、クラスメイト達も、なんなら互いの担任でさえ慣れている。  だけど、今日ばかりは、そのままアイツの教室に入るのを躊躇って、オレは物陰に隠れた。「何やってんだ、オレ」なんて自分の行動に呆れたのは、慌てて物陰に潜んでから。  教室では幼馴染と、そのクラスメイトがなにやら話をしていた。  互いの教室を行き来しているから、そのクラスメイトとも当然顔見知りで、なにかと人懐っこいソイツとは、オレも何度か話をしている。まあ、会話を無理矢理に打ち切らせて「帰るぞ」と言ったりはしないけれど、かと言って話の邪魔になるから、なんて遠慮するような関係でもない。  普通に教室に入って、「待たせたな」と声を掛けられるだけの仲だ。  じゃあ、なんでオレは今隠れている? ……なんとなく、嫌な予感がしたからだ。  虫の知らせ、とでの言うのだろうか。直感がオレの足を教室から遠ざけた。「聞かない方が良い」と頭の片隅で警告が鳴り響いている。しかし、オレの耳はその警告を無視するように、それどころか、警告の大きさが増すにつれて、性能を増していっているみたいで。  離れた此処にまで、アイツ等の声はよく聞こえた。 「まあ、そうっすね。オレ、好きな人がいるんすよ」  聞こえてしまった、とでも言うべきなんだろうか。

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