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*22.前と同じ部屋②
白坂は、立ち上がるとベッドに腰掛けた。
足を組んでこちらに向ける表情には余裕が見える。今までの死にかけた魚のような顔が嘘のようだ。
「早く来いよ。相手してやるから」
カッターシャツのボタンを緩めながら、挑発までしてくる始末だ。
(なんだよ、こいつ急に態度変えてさ)
唐突な上から目線なのが気に入らなかったが、奏太はその声に応えて、起き上がって白坂の前に立った。
「何がしたい?」
顎に指をやって、こちらを見上げてくる姿は妖艶で、奏太は今すぐ押し倒してその唇を吸いたかった。だが、がっついている欲情を悟られたくなく、わざと素っ気ない返事をした。
「……キス」
「いいよ」
即答で了承されて、奏太は少し驚いた。今までキスを拒まれ続けてきたからだ。どんな状況でも、奏太が唇を寄せると彼は必ず顔を背けてきた。
なのに、今はこちらを見上げて薄く目を閉じて奏太のキスを待っている。
(どういう心境の変化だよ)
不審に思いながらも、キスをしないという選択肢はなかった。
白坂の細い肩に手を置いておそるおそる唇を重ねた。唇が触れると同時に白坂が首筋に腕を絡めて強引に舌を入れてきた。
「ふっ……んっ……」
煙草の苦みが口の中に広がって眉を寄せた。彼の舌は慣れた様子で奏太の口内を好き勝手に動き回り、上顎を擽られる。そそれに負けじと奏太もその苦い舌に吸い付いた。
「……ん……ッ」
どちらの声とも分からぬ、吐息交じりの短い喘ぎが唇の隙間から漏れる。
ぬるい快感に浮かされたように、思考がぼんやりしていく。奏太はその感覚が好きだった。体を密着させてさらにキスを深めようとした瞬間、シャツの裾から冷たい手が入ってきた。
その爪先が奏太の乳首を弾いて、びくりと体が跳ねた。
予想外の刺激に奏太は不愉快に眉を顰めて、服の中の手を掴む。
「……ッ、や……めろ……」
目の前の瞳が可笑しそうに細められ、あっさり手を離された。しかし完全に相手に主導権を握られている。
しかし、考える暇を与えられることなく、今度はベッドに押し倒された。
不敵な笑みを浮かべる白坂越しに、天井に備え付けられた古いネオンボールが見えた。
「ゆっくりしてろよ。……好きだろ、お前。ここをこうされるの」
目を合わせたままベルトを緩められる。長いまつ毛の向こうから欲情している瞳が見えて、奏太は喉を鳴らした。
しかしキスするのかと近づけられた唇は悪戯な笑い声だけ残して、腰の方へと向かっていった。そして、まだ柔らかい奏太自身に布越しに柔らかく啄ばむ。
「……ッ」
息を詰まらせた奏太の反応に気を良くしたのか、白坂は下着の上からその形を確かめるように唇でゆっくりとなぞる。くすぐったいようなもどかしい刺激に奏太は切なげな目を向けた。
すると、自分の股間に顔を埋める白坂と目が合った。彼は流し目でこちらを見やると赤い舌を出して、膨らみを口に含む。その瞬間、口の中で奏太自身が跳ねた。
「ん……」
鼻息で白坂が笑ったのがわかった。そして、下着をずらされると中からすでに勃ち上がった奏太自身が露わになる。それを白坂はゆっくりと飲み込んだ。
「……はぁッ」
湿った感触に自身を包まれ、奏太は熱い息を吐いた。
学校でせわしなく始める口淫の何倍も気持ちよかった。奏太の弱い部分を知り尽くしている舌の動きに、あっという間に追い詰められてしまう。
(だめだ、保たない……)
「……もういい」
余裕なく呟いて、奏太に吸い付く頭を押しやった。口を離した時、白坂は茶化すように呟いた。
「早漏」
その瞬間、奏太は腹の下から湧き上がってくる熱に任せて白坂をベッドに押し倒した。
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