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*23.前と同じ部屋③

「このッ」  勢いよく押し倒しされた白坂の身体がベッドに投げされた。仰向けに転がった拍子に、あらわになった首筋に釘付けになる。柔らかな掛け布団に沈んだ彼が少し身を起こして誘うような視線を向けた。  奏太は、まるでおあずけを食らった犬のようにその首筋に噛み付いた。  軽く歯を立てると、噛まれると思ったのか白坂の身体がビクンと跳ねた。 「やめろ……ッ!」 「跡つけられたくなかったら、大人しくしてて。次は本当に噛むから」  唇を添えたまま、そう忠告するとその首筋に舌を這わせた。 「ぅ……」  息を詰まらせたあと、ため息のような熱い吐息が漏れる。奏太は彼のワイシャツのボタンを全て外してそのまま脱がせようとシャツを滑らせた。頰を紅潮させた白坂もぼんやりとした表情で、その動きに従って手を挙げた。しかし、袖を脱がせず、そのまま捲ったシャツで両手を縛り上げた。 「……おい」  違和感を感じた白坂が短く抗議の声を上げたが、抵抗はしなかった。奏太はシャツできつく両手を結びながら、軽口を返す。 「あんた油断ならないから、こうしといてやるよ」  これでゆっくり触れられる。  奏太は改めて白坂を見下ろした。  細い腰に、筋の通った腹筋、薄い胸筋に覆われた胸板。両手を上げた状態ではうっすらと肋骨の形が見えるが、決して痩せすぎでもない。  ずっと触れたかったのに、満足に触れられなかった身体がそこにある。奏太が見惚れていると、白坂は恥ずかしそうに目を伏せた。  確かめるようにその肌の上を指で滑らせると、白坂はくすぐったそうに身をよじった。 「あ……や……ッ」  漏れた喘ぎを塞ぐようにキスをした。さっきより余裕のない口づけ。逃げる舌を絡めて唾液も吐息も全て逃さないよう、執拗に追い詰めて唇に吸い付いた。時折、鼻から抜けるような声にならない声が奏太を興奮させる。  片手で縛って手を押さえつけながら、空いた手で彼の乳首を摘んだ。 「んんッ」  まるで電流を流されたみたいにぴくぴくと跳ねて、唇が離れた。それでも乳首を挟んだ指は離さず、優しく擦るように指を合わせた。 「ぁ……ん……」  眉を寄せじれったい快感に耐える白坂が訴えるような目をこちらに向けた。 「なに?」  しらじらしく返した奏太は意地悪な笑みを浮かべた。白坂は眉を寄せて極力平静を装おうとしたようだが、口を開くと声が掠れていた。 「焦らすな。さっさとしろ」 「なんで。せっかくだしゆっくりやりたいじゃん」 「時間がな……ぁっ」  ちゅっと音を鳴らして、ツンと立った乳首に吸い付くと、彼の文句は吐息に消えた。舌で優しく転がしたあとゆっくりと顔を上げる。 「今日は時間がないって言うの禁止。わかった?」  まるで子供に言い聞かすみたいな口調だったが、それに構う余裕のない白坂は顔を真っ赤にして頷いた。

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