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惑う蝶

ここは、何処だろう? こんな、暗い場所は見たことがない。 「っ…」 羽を広げようとして、あまりの痛みに息を飲む。 そこで、ようやく自分が羽根を怪我してしまい、飛べずに落ちてしまった事を思い出した。 「ここは、…一体…?」 痛みを我慢して上半身を起こせば、そこはまるで見たことのない景色だった。 自分が知っている天界とは、ひどくかけ離れている。 冷たそうな岩肌に、暗い空。 色彩豊かな景色は何処にもなく、物悲しい景色に、酷く心細くなる。 ふと、自分の周りに視線を落とせば、その周りにだけ、慣れ親しんだ緑が続いていた。 「あ…れ…?」 視線を更に先へとずらせば、美しい花まで咲いている。 気がつけば、それにつられ、足はふらふらと草花が咲いている方へと向かっていた。

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