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冷たい月~ベリアル視点~
ベルゼブブと共に上級悪魔達が集う会合に出向いた。
大勢で賑わう場所へ出向くのは気が引けるが、仕事の一環となれば偶には顔を出さなければならなかった。
面倒だが、半ば強引にベルゼブブに連れて行かれるのは、毎年恒例の事だ。
私はその場にいさえすれば、あとは饒舌なベルゼブブが全て取り持つ。
いつも長居はしないが、今回は今まで以上に早く切り上げた。
ルノアが心細くて泣いているだろうと急いで城へ戻れば、城内にルノアは見当たらなかった。
また庭に花を見に出たのかと、窓から庭を見下ろせば、ルノアが庭師の手を握っているのが見えた。
何故だか胸から徐々に冷えていき、体の熱が冷めていく気がした。
それなのに、妙に冷静に頭が働く。
こんな事は初めて…、いや、遠い遙か昔以来の感覚だった。
しかし、この感情が一体何ものであるかは、昔も、今も、私には分からなかった。
ただ、呆然とルノアの行動を眺めていた。
そうしている間に、ルノアは城の外へと走っていく。
あの悠長なルノアが、あれ程早く走れたのかと驚いた。
それ程までに必死という事だろう。
その時、私はルノアが逃げ出す機会を待っていたのだと思い至る。
分かりきっていた事の筈だった。
それなのに、
何故だか酷く落胆した。
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