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城の外へ
必死に走っていると、ゴーーッと後ろから何かが近づいてくる音がして振り返る。
「!?」
大きくて黒い獣の様な魔物が、すぐ横を通り過ぎていく。
そして、私の進む先で勢いよく砂埃を上げて止まった。
「ひっ…」
襲われてしまうかと身構えたけれど、獣はピタリと止まり、微動だにしない。
よくよく見れば、獣は大きな馬車の様な車を引いている。
その車の扉が勢いよく開き、中から慌てた様子で出てきたのはベルゼブブ様だった。
「ルノア!?」
「ベルゼブブ様…!?どうして、此方に!?」
私も急いで駆け寄ると肩を引き寄せられる。
「ここはベリアルの敷地の外だぞ!?出先から城に戻った途端に、部下からお前が外に出てしまったと知らせを受けて、慌てて探しに来たのだ…!」
「い、今、ベルゼブブ様の所に行こうと…!あ、あの…!わ、私…!私…!」
「落ち着きなさい、ルノア…。血相を変えて、一体何があったと言うのだ?」
「わ、私の事をミカエル様が探されていると聞いて…!」
「………その話は、誰から聞いたのだ?」
ベルゼブブ様の声のトーンが下がる。
「その…、噂を聞いて…」
「此方へおいで」
ベルゼブブ様は大きな魔物の車へと、私の手を引いた。
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