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第1話
「離せっ! 解けよ! あんた達、なんなんだ!?」
後ろ手に縛られ、目隠しをされた青年は、自分の状況が飲み込めず叫び続けていた。
青年は友人から「少し困ったことになった。助けてくれないか」と縋られ、友人の呼び出しに応じたところを三人の男らに拉致されたのだ。
転がされているのは畳の上らしい。
不安で怯える青年を、男が抱きかかえて目隠しを外した。
「!?」
驚いた青年の顎を取り、目の前の男に見せた。
能面のような無表情の男だった。
「なるほど」
「な、なに? あんた達はいったい………」
目の前の男はじっくりと青年の顔を見て
「買おう」
と、青年を抱きかかえた男に告げた。
買うとは……いったい何のことだ? 不安げに戸惑う青年に、抱きかかえている男が言った。
「あんた、友人に売られたんだよ。あいつは賭博でイカサマをしてね。貧乏長屋暮らしで金も無い奴だったから、どう回収しようかと思ったら、肩代わりしてくれる友人がいるって言うんでね」
「か、肩代わり?」
青年は顔色を無くして、背後の男を見た。
「あんたの顔を見てピンときたんだ」
「うちの上客で、貴方に似た男娼ばかり買うお方がいるんですよ」
能面顔の男が青年に説明するように言った。
「夜の世界じゃ有名だ。護堂会の色男の趣味は………」
「何を言って、離してくれ。俺は、違う。何でこんな………」
戸惑う青年───透の耳元に男が囁いた。
「ここは男色専門の遊郭だ。こちらの八雲さんがお前を買ってくださったんだよ。たっぷりと旦那に可愛がってもらいな」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
遊郭主である八雲は上客に「貴方好みの青年が入った」と文を届けさせた。
足元を見られ、少し値が張ったが丁度良かった。
前回来たのがひと月前だったから、文を読んで今夜にも来るだろう。
大抵の客は、若く少女のように美しい少年を好むが、この上客は違った。
少しとうがたった、派手さは無いが、穏やかですっきりとした顔立ちの男娼を好む。
透はまさしく上客の好む顔立ちをしていた。
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