5 / 5

第5話

透はガクガクと痩身を震わせながら、陸に上げられた魚のように開いた口をパクパクとさせた。 棒をグリッと回されて悲鳴を上げる。 「ヒィ! いやぁあ………やめて、もぅ、ゆるしてぇ………あぁあ………」 「もっとよくしてやる。ほら………」 彰広は笑みを浮かべて、ゆっくりと回して尿道から棒を抜いてゆく。 「あっ! ああ、ん………あ! はぁあ」 このとき透が感じたのは、まぎれもない快楽だった。 彰広は淫靡な笑みを深くして、再び尿道奥深くへと棒を埋めていく。 「い………っはぁ! あ、あ、いやぁああっ」 はらはらと涙を零して、透は身も世もなく啜り泣く。 哀れで淫らなその様に、彰広の息も荒くなる。 「嫌じゃねぇだろう? 随分良さそうじゃねえか」 「ちがう………ぁあ! 違う………んんぅ!」 苦痛と快楽の狭間を彷徨う透の表情を、彰広は食い入るように見つめた。 「ほら、こうされると堪らねえんだろ?」 「あぁあ─────ッッ!!」 透は縛られて不自由な体を震わる。 初めての強烈な快楽に鳴き続けた。  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆  散々責められ鳴かされ、透は虚ろな瞳をして小刻みに裸身を震わせていた。 彰広は透を縛った縄を解いた。張型も後孔から抜くと、透は小さく喘いだ。 透は縄酔いをしており、手足を解放されてもぐったりとしている。 彰広はシュッと帯を解き、手早く自身の着物を脱いで見事な裸身を露わにする。体格に見合ったその雄は猛々しく勃ちあがっていた。 「透、俺を見ろ」 「あ、あ………」 透と視線を絡ませたまま唇を吸う。 「………俺がお前の初めての男だ」 そう宣言をして、熱い肉棒で透の後孔を貫いた。 「あぁあああッ!!」  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 延々と透は彰広の雄で犯され続けていた。痛みは感じておらず、ぞくぞくと背を快楽が走った。 透の後孔はすっかり彰広の雄の大きさと形に馴染んでいた。 「ああ、透、透………ずっと、お前が欲しかった」 透を甘く酔わせているのは、直接的な肉体の快楽だけではない。 彰広の切なげな声に感じて、透は情交に酔い痴れた。 透も彰広を忘れたことはなかった。 昔、縁側でうたた寝をしていた透の唇に、彰広はそっと自分の唇を触れさせたことがあった。 実はあの時、透は目覚めていたのだが、彰広の唇が僅かに震えているのを感じて眠ったふりを続けた。 その後、彰広は透の前から姿を消し、なぜ接吻をしたのか聞けず仕舞いだった。 たった一度の淡い口付けを、透は忘れることができなかった。 あの日の事をぼんやりと思い出した透は彰広の頭を引き寄せた。 自ら彰広に口付け、口内に舌を挿し入れて、彰広の接吻をねだった。 「!!」 一瞬硬直した後、彰広は激しく透からの接吻に応えた。 互いに舌を絡ませあい、透の手は彰広の髪を乱した。 「ああ、透! 透!」 「彰広………ああ、あぁあ!」 きつく抱き寄せ、抱き締め、壊れてしまうほどに激しく揺さぶる。 そうして、二人同時に絶頂を目指す。 「あ! あ!………もぅ、ああ! 彰広ッ!!」 「………透ッ!!」 彰広は何度めかの熱を透の最奥に放った。透も快楽の頂きに達した。 「………お前が好きだ」 彰広の逞しい腕の中で切ない告白を聞きながら、透は意識を失った。  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 目覚めたとき、透は一人で朱の褥にいた。 ぐるりと部屋を見渡せば、彰広は着物を着て胡座をかき、紫煙を燻らせて煙管(キセル)を吸っていた。 彰広はぼんやりと透を見つめている。 「彰広?」 「八雲には話をつけておいた」 彰広はカンと煙管の灰を落とした。 「お前はもう男娼じゃない。自由だ。動けるようになったら、ここを出ろ」 彰広はゆっくり立ち上がり、透に背を向けた。 「達者でな」 そう告げて部屋を出て行こうとしていた。 「………!!」 もう二度と透に会う気は無いのだろう。彰広はまた透の前から姿を消す気だ。 考えるよりも先に透の体が動いた。 「透っ!?」 透は這って布団から出て、彰広の着物の裾を掴んだ。 驚いて歩みを止めた彰広の脚に縋るようにして引き止める。 「行くな!」 無様だっていい。また彰広を行かせる訳にはいかない。 「俺だってお前に会いたかった!」 「透………」 透は離すものかと彰広にしがみついた。 「彰広、行くなよ」 「分かっているのか? 俺がお前をどんな風に見ているのか………昨夜、あれだけ酷いことを………」 「七年前、俺に口付けたのは何故だ?」 「!」 「あれからずっとお前のことが忘れられなかった」 彰広はたまらず透を抱き締めた。 「彰広。もう一度、言ってくれ」 「お前が好きだ。ずっとお前だけだ。透」 そう告げた瞬間、透が彰広の頭を引き寄せ接吻をした。 深く舌を絡ませ、互いの唾液を啜りあった。透の手が彰広の髪を甘く乱す。 「………ああ、透」 「もう勝手にいなくなるな。俺もお前が好きだ」 「透!」 彰広はきつく透を抱き締める。透も負けじと彰広の背を掻き抱いた。 そうして再び、朱の褥の上に押し倒され、甘く交わった。  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 遊郭の主である八雲は煙管を燻らせため息を吐いた。 まさか透が彰広の想い人だったとは………。 もう彰広は遊郭に足を運ばないだろう。上客を失って手痛いが、倍の値段で身請けさせた。 ここを出る時の彰広の蕩けるような甘い表情を思い出し、八雲の唇に珍しく微笑が浮かんだ。 「せいぜいお幸せに」 ぽつりと呟いて、再び煙管を咥えた。 終

ともだちにシェアしよう!