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第5話
透はガクガクと痩身を震わせながら、陸に上げられた魚のように開いた口をパクパクとさせた。
棒をグリッと回されて悲鳴を上げる。
「ヒィ! いやぁあ………やめて、もぅ、ゆるしてぇ………あぁあ………」
「もっとよくしてやる。ほら………」
彰広は笑みを浮かべて、ゆっくりと回して尿道から棒を抜いてゆく。
「あっ! ああ、ん………あ! はぁあ」
このとき透が感じたのは、まぎれもない快楽だった。
彰広は淫靡な笑みを深くして、再び尿道奥深くへと棒を埋めていく。
「い………っはぁ! あ、あ、いやぁああっ」
はらはらと涙を零して、透は身も世もなく啜り泣く。
哀れで淫らなその様に、彰広の息も荒くなる。
「嫌じゃねぇだろう? 随分良さそうじゃねえか」
「ちがう………ぁあ! 違う………んんぅ!」
苦痛と快楽の狭間を彷徨う透の表情を、彰広は食い入るように見つめた。
「ほら、こうされると堪らねえんだろ?」
「あぁあ─────ッッ!!」
透は縛られて不自由な体を震わる。
初めての強烈な快楽に鳴き続けた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
散々責められ鳴かされ、透は虚ろな瞳をして小刻みに裸身を震わせていた。
彰広は透を縛った縄を解いた。張型も後孔から抜くと、透は小さく喘いだ。
透は縄酔いをしており、手足を解放されてもぐったりとしている。
彰広はシュッと帯を解き、手早く自身の着物を脱いで見事な裸身を露わにする。体格に見合ったその雄は猛々しく勃ちあがっていた。
「透、俺を見ろ」
「あ、あ………」
透と視線を絡ませたまま唇を吸う。
「………俺がお前の初めての男だ」
そう宣言をして、熱い肉棒で透の後孔を貫いた。
「あぁあああッ!!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
延々と透は彰広の雄で犯され続けていた。痛みは感じておらず、ぞくぞくと背を快楽が走った。
透の後孔はすっかり彰広の雄の大きさと形に馴染んでいた。
「ああ、透、透………ずっと、お前が欲しかった」
透を甘く酔わせているのは、直接的な肉体の快楽だけではない。
彰広の切なげな声に感じて、透は情交に酔い痴れた。
透も彰広を忘れたことはなかった。
昔、縁側でうたた寝をしていた透の唇に、彰広はそっと自分の唇を触れさせたことがあった。
実はあの時、透は目覚めていたのだが、彰広の唇が僅かに震えているのを感じて眠ったふりを続けた。
その後、彰広は透の前から姿を消し、なぜ接吻をしたのか聞けず仕舞いだった。
たった一度の淡い口付けを、透は忘れることができなかった。
あの日の事をぼんやりと思い出した透は彰広の頭を引き寄せた。
自ら彰広に口付け、口内に舌を挿し入れて、彰広の接吻をねだった。
「!!」
一瞬硬直した後、彰広は激しく透からの接吻に応えた。
互いに舌を絡ませあい、透の手は彰広の髪を乱した。
「ああ、透! 透!」
「彰広………ああ、あぁあ!」
きつく抱き寄せ、抱き締め、壊れてしまうほどに激しく揺さぶる。
そうして、二人同時に絶頂を目指す。
「あ! あ!………もぅ、ああ! 彰広ッ!!」
「………透ッ!!」
彰広は何度めかの熱を透の最奥に放った。透も快楽の頂きに達した。
「………お前が好きだ」
彰広の逞しい腕の中で切ない告白を聞きながら、透は意識を失った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
目覚めたとき、透は一人で朱の褥にいた。
ぐるりと部屋を見渡せば、彰広は着物を着て胡座をかき、紫煙を燻らせて煙管(キセル)を吸っていた。
彰広はぼんやりと透を見つめている。
「彰広?」
「八雲には話をつけておいた」
彰広はカンと煙管の灰を落とした。
「お前はもう男娼じゃない。自由だ。動けるようになったら、ここを出ろ」
彰広はゆっくり立ち上がり、透に背を向けた。
「達者でな」
そう告げて部屋を出て行こうとしていた。
「………!!」
もう二度と透に会う気は無いのだろう。彰広はまた透の前から姿を消す気だ。
考えるよりも先に透の体が動いた。
「透っ!?」
透は這って布団から出て、彰広の着物の裾を掴んだ。
驚いて歩みを止めた彰広の脚に縋るようにして引き止める。
「行くな!」
無様だっていい。また彰広を行かせる訳にはいかない。
「俺だってお前に会いたかった!」
「透………」
透は離すものかと彰広にしがみついた。
「彰広、行くなよ」
「分かっているのか? 俺がお前をどんな風に見ているのか………昨夜、あれだけ酷いことを………」
「七年前、俺に口付けたのは何故だ?」
「!」
「あれからずっとお前のことが忘れられなかった」
彰広はたまらず透を抱き締めた。
「彰広。もう一度、言ってくれ」
「お前が好きだ。ずっとお前だけだ。透」
そう告げた瞬間、透が彰広の頭を引き寄せ接吻をした。
深く舌を絡ませ、互いの唾液を啜りあった。透の手が彰広の髪を甘く乱す。
「………ああ、透」
「もう勝手にいなくなるな。俺もお前が好きだ」
「透!」
彰広はきつく透を抱き締める。透も負けじと彰広の背を掻き抱いた。
そうして再び、朱の褥の上に押し倒され、甘く交わった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
遊郭の主である八雲は煙管を燻らせため息を吐いた。
まさか透が彰広の想い人だったとは………。
もう彰広は遊郭に足を運ばないだろう。上客を失って手痛いが、倍の値段で身請けさせた。
ここを出る時の彰広の蕩けるような甘い表情を思い出し、八雲の唇に珍しく微笑が浮かんだ。
「せいぜいお幸せに」
ぽつりと呟いて、再び煙管を咥えた。
終
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