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会社にて
「ふぁ~~~~………」
3階フロアの給湯室で淹れたてのコーヒーを
飲みながら壁にもたれ掛かり………
朝から思いっきり大きなアクビの連発
「クスッ……律先輩寝不足ですかぁ?
あ―― もしかしてぇ~~?
週末は彼女とラブラブだったとか?」
朝からキラキラ笑顔全開の後輩
手嶌 沙奈(てしま さな)ちゃん
彼女の兄・幸作と大学で同期だった。
(因みに、奴は営業に属してる)
その沙奈ちゃんが、みんなのコーヒーにザブザブと
砂糖とミルクを入れながら、寝不足の原因を
聞いてきた
その胸焼けミルクコーヒーを飲みたくないから、
ブツ投入前に自分のカップだけ確保しに
朝も早うここまで来ました
「ラブラブ? まさかぁ~~
んなワケないよぉ~~。引っ越し荷物が
なかなか片付かなくてねぇ」
そう言いつつまた大アクビ。
「あ、そっか、先輩、いよいよ待望の1人暮らし
始めたんでしたっけね」
「うん、まぁね」
東京に越して来たばかりの頃は独身寮のお世話に
なっていたが、先週、思い切って引っ越した。
「いいなぁ~、私も早いとこ女子寮から脱出したい
ですぅ」
「―― おっ! おはよ、りっちゃんに沙奈ちゃん」
給湯室側に立つ沙奈ちゃんと
廊下を挟んで壁に寄り掛かる俺
その間を笙野専務が通過して、
奥の男子トイレに入って行った
「「おはようございまーす」」
2人でその後ろ姿に元気よく挨拶をした。
㈱アクトは、芸能プロダクションとしては
業界内で大手の部類に入る。
芸能人の育成・総合マネジメントだけでなく、
番組制作やタレント本の出版にも力を入れており、
営業種目も多岐に渡る。
俺が属している ”企画営業”は
所属アーティスト達のライブや握手会・サイン会、
スターと一緒のイベントなどを草案・企画したり、
そんなイベントが円滑に進行するよう
おぜん立てをする部署だ。
最近になってやっと自分の作った企画が
会議に通されるようになったが。
新人の頃はせっかく徹夜して新企画を練り上げても
徹底的にダメ出しされて、ボツ箱行きが定番だった。
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