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第5話
「……ん、ぁ」
「起きたか。とりあえずこれ飲め。昨日みたいなことにはならないから」
体を起こしてもらい、錠剤と水を受けとった。
きっとこれは抑制剤。俺では到底手に入らない高価なもの。
それを飲みつつ目の前の男を観察する。
見覚えのあるような黒髪。立派な耳。
着崩されたシャツから覗く艶かしい胸板。
抑制剤を持っているということは高貴な身か。
長いまつげに隠れた凛凛しい瞳は金色に輝き…。
「あ……」
目、あって……。
堪らずそらし手元を見つめる。
「お前……昨日のこと忘れたとかじゃ、」
「……」
ピクッと体が跳ねた。
言われてみれば露店街で盗みを働いて以降の記憶がない。
なんとなく家に着いたところまでは覚えているが、なぜ彼がいるのか、なぜ介抱のような状態になっているのか、それがわからない。
「はぁ……。そうか、わかった。説明する。水のおかわり は いるか?」
「ぉねが、…!?」
声、枯れてる…。
「まあそうだろうな。あんだけ声出したんだ。ちょっと待ってろよ」
喉を抑え慌てた俺に笑いコップを受け取った。
少しすると彼は戻ってきて、さっきと同じ俺の斜め前 布団から外れた硬い床の上に座った。
並々と水の入ったコップをもらい、彼の話に耳を傾ける。
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