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第5話 -8

 意識が朦朧としている状態でも悟志は十分に可愛い。ただ、今のこの体勢にも反応を示せていない状況ではレイプと変わらない気分になってくる。  腰を振るのをやめ、頬を撫でて見下ろしたまま悟志の呼吸が落ち着くのを待つ。蕩けた表情が段々と和らいでいき、光を見上げる。 「ひ、かり」 「さと、これ気持ちいい?」  腰を揺らし、悟志の欲望を擦り先端が悟志の腹を抉る。抜けるような嬌声を塞ぐように光は唇に吸い付いた。 「ね、さと。答えて?」 「っ、ん、ぁ」 「答えないならやめちゃうよ」 「や、だ、やだ……」 「気持ちいい?」  またすぐに理性を飛ばしてしまいそうなその意識を繋ぎとめるために動くのをやめ、足を開かせ身体を密着させた。じっと視線を合わせるそれに、悟志は顔を逸らし逃げる。  ならやめるだけ。光は内股を撫で、上体を持ち上げた。 「気持ちよくないならもうやめちゃうけど、気持ちいいの俺だけだった?」 「ひー、ひぃ、もっとほしい、ひぃ」 「じゃあまた今みたいに足ぎゅうってして?」  幼い頃の呼び方で、それでも理性は飛んでいない普段通りの口調。光が求めると、未だに触れあったままだった光の昂ぶりを挟むように足を閉じる。またも上に乗り上げるような格好になり、悟志がずっと自分相手に組み敷かれていることを意識し続けるように見下ろしながら再開した。 「さと、これじゃ俺とほんとにえっちしてるみたいだね」 「っ、馬鹿、だろ」 「俺とじゃ嫌? 俺はね、さととなら何してもいいよ」  悟志となら、本当に何をしてもいい。抱かれるのだけは勘弁だが、それ以外なら何でも。  光の言葉に、悟志の表情は一瞬だけ嬉しそうに緩む。それでも、すぐに無理だと気付いたのかそれは歪んでしまった。 「無理だ」 「嫌じゃないんだ? 俺に押し倒されてえっちな気分できゅんきゅんしてるさと、可愛くて俺は好きだよ。それでも無理?」 「馬鹿、お前、本当に馬鹿だ」 「さとは俺のこと可愛いって言ってくれてるし、どっちかって言うなら抱かれるんじゃなくて抱きたいんだろうけどさ。俺可愛い子大好きだから抱きたいんだよね。さと、可愛い。可愛いよさと、大好き」 「っ」  可愛いと好きを繰り返し、悟志の足にくちづけた。言葉だけで興奮してしまうようで、悟志は無意識の内に腰が跳ねる。その揺らし方は初めてのぎこちないようなものとは程遠く、他の男の陰を感じて嫉妬で狂ってしまいそうだ。  それを笑顔で隠し、朗らかに悟志の意識を誘導した。 「ほら、きゅんきゅんしてもうイっちゃいそうじゃん。俺もイきそう。ひくひくするの反則だよー、さとのえっち。俺ちゅーしながらじゃないとイけないから、ちゅーしていい?」 「……これ、擦り合いじゃないだろ」 「そんなことないよー。それに、そうじゃなくてもえっちなの嫌じゃないでしょ?」  首を振るそれに、内心で嘘つきと毒づく。好きでもない時雨相手にフェラもセックスもさせたくせに、嫌じゃないなんてしれっと嘘を吐くのが気に入らない。  だから、少し意地悪をすることにした。

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