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第5話 -11
きっと、自分は抱く側だとずっと思っていたのだろう。悟志の方が大柄で、光は平均よりも大分身長も小さく顔だって可愛い部類に入る。だから何よりも戸惑いの方が大きいようだ。
生粋のネコなのに、そんなことを考えているなんて可愛い。光は鞄から避妊具と潤滑剤が入ったレジ袋を取り出す。見舞いができなかったら帰ってセフレに連絡でもしようかと考えていたからだが、悟志は光が何故そんなものを持っているのかもわからずにいる。悟志の中で、光は一切そんなことに興味がないと思っていたのだろう。
そんなはずない。光だって一般的な男子高校生とそう変わらない。恋愛に興味があるのは勿論、セックスだって同じこと。顔が良く人あたりも良ければそれなりに経験だってある。
光は、慣れたように避妊具の封を切る。それを装着しようとし、ふと思い出した。
時雨は生で舐めさせていた。なら、自分相手にだってしてくれるのでは。
「さと、フェラ好き?」
「……どっちでもない」
「俺ね、生でされるの気持ちよくてすっごい好き。さとのと擦り合いっこしちゃってるけど、嫌いじゃないならしてくれる?」
問うようにしながら、悟志の腕を引き顔の近くに寄せる。悟志は少し躊躇いを見せたあと、口に含んだ。太さから口に入りきらないようで、横から食み少し恨めしそうに見上げた。
得意ではないようで、辿々しい動きに光は愛おしいと悟志の前髪を掻き上げてやる。
「さと、カリのとこ舐めて。……ん、そう。ねえ、そろそろ認める?」
舐めながらも認めずに拒否するそれに、強情さとは少し違ったものを感じる。認めないなら続けない。匂いにあてられたのか興奮してきた様子なのに頑なに認めない悟志の頭を掴み、舐めていたそれを離させた。
「?」
「好きじゃないならもうしなくていいよ。その代わりもうおしまいだけど」
「ぅ」
「おしまいでいいの?」
幼い子供に話しかけるように、穏やかに聞いてみる。悟志は迷った末、上体を起こし視線を逸らした。
「好きだとか嫌いだとかじゃなくて、俺としたいのは、俺を好きな奴だから」
「じゃあ、さとは俺としたくなかった?」
「……わからない」
「わかんないならしないでいいんだよ。したいって思ったときしかしなくていい。ごめんね、やだった?」
「嫌でもない。ひぃは、無理にしないから」
無理矢理にはしていない。それでも、したくないのにやらせたなら変わらない。光は悟志の事情なんて気にせず、押し付けたことを今更自覚する。
ずっと無理にされていたのだから、嫌でもできるなんてわかりきったことなのに。悟志にとって嫌でないかは、父親にレイプされるレベルでないと明確に嫌だと判断できない。
時雨や市倉に食われたことに意識が行き過ぎて、そんな簡単なことに気が付かないなんて。
「ごめんね、可愛かったから我慢できなかった。付き合ってもないのにさせてごめん」
「……ひぃ」
「なぁに?」
「ひぃは、俺とそういうことができるくらいには、俺のこと、嫌いじゃないのか?」
「うん。さとのことはずっと大好きだよ」
「……なら、したい。したいならいいんだろ」
口ぶりから拗らせた承認欲求のようなものだとすぐにわかる。セックスが好きなわけでもないのに続けようとするそれを、普通なら止めなければいけない。それでも、今止めればきっと悟志は自分が本当は好きではないのだと思ってしまうかもしれない。
だから、止められなかった。
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