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第18話 -18
甘やかしながら散々抱き締めて腰を振り、自分が満足するまで離さなかった。
両腕の力を緩め身体を離せば、悟志は両足を軽く痙攣させながらうっとりとした様子で市倉を見上げてきている。
何度もキスを繰り返しながら、中で果てたそれを引き抜き外に出られるよう乱れた服装を整えていれば、悟志は腕を伸ばして抱きついてきた。
「いち」
「なんですか?」
「だ、……だい、すけ」
「……はい。大輔ですよ」
名前を呼んでほしいと言ったのを覚えていたのか。市倉は額にキスをし抱きついてきた両腕を掴み離させた。
「そろそろ戻りますね。お風呂、澤谷に入れてもらいましょうか」
「なんでだ?」
「あいつに、坊ちゃんは俺のだってわからせたいからです」
意地が悪いとは自分でも思うが、諦めさせたいから敢えて。
少しだけ表情を歪めた理由は聞かず、ベッドから降りカエルのように広げられた膝を閉じさせ部屋に戻るために離れる。
どうせすぐ外にいるだろう。そう思いながら愚図る悟志を置き玄関を開けると、澤谷はやはりか扉のすぐ横に座り込んでいた。
「ガキみてえだな」
「……終わったんすか」
「嗚呼。ベッドに寝かせてっから風呂連れてけ」
「なんでまた俺が……」
自覚をしてしまった今、もう一度風呂に連れて行くなんてことがどれだけ難易度が高いか。そんなこと誰だってわかるのに市倉は任せたと言いきり悟志の名前でとった同じフロアにあるもう一部屋に足を向けた。
玄関を開け、部屋に入るなり風呂に向かう。
まさか澤谷までもが悟志のことをそういった目で見るようになるとは思っていなかった。が、風呂の一件で目覚めてしまったのだろう。彼女が欲しいという話もしたことがあれば適当に街中でナンパした女とホテルに行ったなんてことも言っていた記憶がある。性欲だって人並みにあるのに、好きになった相手が16歳だからって我慢できるとは思えない。
まあ、できなかったら護衛をやめさせるだけだ。服を脱ぎ、痛みがある肩甲骨を鏡で確認する。大きく描かれた牡丹の花弁の上に爪痕が残り、薄っすらと血が滲んでいた。
他の相手、行きずりの女相手であれば確実に激怒していた刺青がある皮膚への傷だったが、相手が悟志なら怒りはしない。寧ろ、痕を残されたことに喜びさえも感じる。
25も下の子供に手を出すなんて最低な大人だとわかっている。18まで待つと言っている澤谷の方が、余程まともな人間だ。
でも、どうしても欲しくなってしまった。年の近い男と仲良くして、一度でも自分よりあれといる方がいいと思われたことが耐えられなかった。
これが性欲かはわからない。ただ、明音と同じ顔を、似たような声を、自分を慕ってくれる純粋だった子供を自分だけのものにできるならもうどんな手段でも使う。
悟志の中での唯一信頼できた大人から、唯一愛せる人間にしてほしい。
そうなるためには、世界中の人間からどんなに非難されても厭わない。
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