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第19話 -7

 一度悟志に内装を見せて何を買うかを聞かなければいけない。  自分が買っておいてもよかったのだが、家具を買うために金は残しておけと言ってしまっていた。約束ごとを破れば不機嫌になるのは目に見えているために、仕方なしにだ。  元からあった家具はすべて自分の部屋に。家電は適当に運び込んでもらい、悟志の部屋は若衆達は入ることも駄目だと禁じた。  エレベーターに悟志と2人で乗り込み、ボタンを押したのは26階。上がるエレベーターは途中で止まることはない。悟志を軽く揺り起こし、寝惚けているそれに着いたと教える。病院にいたはずがエレベーターに乗っていたことで混乱していたようだが、早くも目的階に辿り着き車椅子を押し部屋に向かえば理解したようだ。  これから共に住む我が家の前に辿り着き、玄関ポーチに一度車椅子を停める。悟志を軽々と抱き上げオートロック式の鍵を開け扉を開けた。  広い玄関。アパートの時の3倍近くはあるスペースで、歩いて入れる収納まである。キョロキョロと見回す悟志の靴を脱がせ、適当に棚へ置いた。 「今日からここに住みます。何処から見たいですか?」 「……風呂」 「だと思った。お風呂はこちらです」  自分で歩かせるのは後ででいい。抱き上げたまま靴を脱ぎ、風呂に向かう。今まで転々としていたホテルと比べても遜色ない広さに清潔感。悟志は嬉しそうに眺めていた。  他にも対面式の広いキッチンや全面ガラスで太陽光が降り注ぐリビングを見て回る。後は寝室だけ。  市倉はそこで一度悟志を床に下ろした。片方の部屋の前に積まれた段ボールを全て中に運び込むためだ。 「本当は坊ちゃんの部屋の方が広い予定だったんですが、あいつも一緒になったので俺とあいつの部屋の方を広い方にさせてもらいました。いいですよね」 「寝られる場所さえあればいい」  本来なら自分達の方を狭い部屋にしておくべきなのだが、広い部屋に2人住む方がいいと言い出しあいつを同じ部屋に住まわせてしまうかもしれないから。何としてでも一緒の部屋にはさせたくなかったため、そのように変えた。  自分の所有物やテリトリーにまるで興味がない悟志は、すぐに頷く。助かった、そう市倉は安堵した。

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