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お前を信じてるよ

「どうだった?うちの副は」 演習が終わり、わざわざ人がいない時間に更衣室で着替えているとセツカが入ってくる。危ない、上を脱ぐところだった。 「……………ノックしろよ」 「あ"?男同士だろうが、構わないだろうが」 「……あんまり見られるのは慣れないんだよ」 「そんな乙女でよく生きてこられたな」 クソ、コイツ…、足の小指の骨折ってやろうかな 「足の小指折るぞ」 「おー怖い怖い」 んなことクソ程も思ってない癖に何言ってんだ。 「それで?どうだった?」 しつけぇな、コイツも。 「普通に強かったよ」 「……へぇ?」 んだよ、信じてねぇな。本気だっつの。俺はセツカをチラッと見て、埒があかないと思い気にせず着替え始める。シャワーは部屋で浴びよう。 「ウチのセイウンとあそこまでやりあったんだ、文句ねぇよ。」 「それで?」 「…………あの女の子だって、扱い難い類なはずだ。それをアンさんはしっかり合わせていたし、1戦目2戦目だって、負けたとはいえ俺らにとってはやりづらい相手だった。」 俺の言葉を促す様子を見せるセツカに心底イラッとする。 「……ただ、自信が無いというか、自己肯定感が低いせいで自分の力を出しきれない。」 「というと?」 「…………自分の出来る範囲を決めつけてしまうから、本当はここまでできるのにここまでしかできないと、自分で思ってる」 俺は右手で範囲を示して見せつつ、説明する。 っていうか、 「……こんなことをお前に言ったなんてアンさんが知ったら、絶対嫌がるだろう?やめてやれよ。」 そう言い、セツカを睨み付けるとコイツは口角をニィッとあげ、心底面白いものを見つめるように俺をその視界に捉える。 「アイツは元は俺のお世話係だったんだよ」 それは…………アンさん、大変だっただろうな 「最初のうちは「セツカ様、セツカ様」ってうるさかったが、今ではやっと正真正銘団長と副団長の関係になってきたっつうのに、今度は自信が無いだあ?ふざけんなよ」 「お前まさか、わざと遅れてきたな?」 「お前ならアイツの凝り固まったプライドをぶっ壊してくれると思ってな」 「テメェ、それはあの人に失礼じゃねえか?」 「俺は使えるモンは使うだけだ」 …………このやろう。 ラフな格好に着替え終え、さっさとこの場から去るために更衣室の扉のドアノブを掴む。 「お前を信じてるよ」 そう言われ、体の動きを咄嗟に止めてしまうが止まるな、と自分に言い聞かせて部屋を出る。 うるせえ、 *** 「シキ!おかえり!」「……おかえり」 「ただいま」 更衣室を出て寮の方へ歩いていくと双子が前からパタパタと近づいてくる。犬だ、犬のようだ。 「もう!演習前に、シキとたっくさんしゃべりたかったのに!団長がシキを独り占めするから!」 しっかりと自己主張ができるライトとそのストッパーをすべくなかなかできないエルが微笑ましくてついつい甘やかしてしまう。 ごめんよ、と言いつつ二人の頭を撫でまわす。 「ご飯!ご飯行こう!」 二人と手を繋いで、食堂を目指した。

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