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合コンでイキる奴は大体偏見でモノを言う

「おー!東雲めずらしいな!」 そう言って、肩に腕を回してきたのは同じゼミの男だった。確か、藤田という名前だった気がする。金髪に、複数個所にピアスがついており、見た目が豪華だ。  久賀に指定された居酒屋へと向かい、もうとっくに集まっているだろう個室のテーブル席の襖を開ける。その場にいたのは、女子たちが奥の方に五人座っており、すでに料理を頼んでいるようだった。男どもは俺も顔見知りのやつらで、安堵する。 「遅れてすまん」 「いーって!いーって!お前何飲む?とりまビールか!?」 もうすでに雰囲気に中てられているのか、出来上がっている様子の男にテーブルの上にあった水を渡す。襖を開けた瞬間から、強い視線たちに気付かないフリをしていたが、空いていた席に座ると視線も交わり、無視することはできない。 「遅れてすみません、二年の東雲です」 軽く頭を下げると、隣に座った男が「かてーよ!東雲ー!」と野次を入れられた。 「東雲君が来てくれるって聞いてテンション上がっちゃった!こういうのにあんまり顔出さないって言ってたから…」 と、話し始めたのは、右斜め前の女の子。金髪に近い髪の毛を触りながら、少し照れたように自己紹介をしてくれる。その子から順番に自己紹介が始まり、同じ内容を聞かされてる男達は静かに話半分で聞いているようだった。 「東雲君って、マッキーのゼミなの?」 俺が到着してから三十分ほどで、幹事の男が席のシャッフルを要求したため、横には女の子が座っている。マッキーとは、牧先生のことである。その質問に、頷くと彼女は「えー!」と声を上げた。 「あの先生、課題多くない? 結構細かいし、めんどくさいよね」 それに同調した女子達に、まわりの男子達も慌てて「ねー」なんて言っている。そうか、そういう考えの人もいるのか。 「確かに課題も多いけど、優しい先生だよ。 丁寧に教えてくれるし、教えるの上手いし、課題もちゃんと説明してくれるから、そんなに苦じゃないよ」 空気の読めない人間だと思われただろうが、自分の好きな人をその場しのぎでも悪く言いたくはなかった。 「確かに!優しいよね、マッキー!」 俺から一番離れた席の女子がそう叫んだ。すると、他の女子も「確かにそうだったよね」なんて言い始め、挙句の果てに男子も「ねー」と繰り返した。  これ、なんの茶番だ。  男女計十人が入るには、少し狭く感じる個室がより窮屈に錯覚する。だから、嫌なんだよな、こういう場所。そもそも、自分がこういう場所に需要がある人間だとは思えなかった。    女子全員が、トイレに席を立った瞬間、男子らは一気に崩れ落ちた。 「久賀じゃ女全員とられちまうから、久賀じゃなくてお前来た時俺の時代キター!って思ったのによ…!お前もかよ!」 「はあ…?なにが?」 さも来てほしくなかったとでも言いたいような口調の奴等に、腹が立った。こっちはわざわざバイトが休みの日に数合わせのために来ているというのに、酷い言い様だ。 「天然鈍感すぎなんだよ…クッソ、こっちは誰も持ち帰れなさそうだっつってんの!」 一斉に頷き始めた男子たちに、俺は溜息をつく。 「…じゃあ俺もう帰るけど。なに、いくら?」 財布を取り出し、さっさと料金を支払って帰ろうかとバッグに手を掛けた瞬間、女子たちが帰ってきた。 「おまたせ~ってアレ!?子規クン、帰っちゃうの!?」 いつの間にか、親し気に呼ばれている。別にそれはいいのだが、豊満な胸を押し当てるように、腕に絡む女の子に俺は思わず面食らってしまう。  男子からの恨みがましい目に、俺は思わず首を振ってしまった。 「…いや、藤田に借りてた金返そうと思って」 終わった。これで帰る機会が無くなってしまった。畜生。  

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