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第6話
「……ありがとうございました……あの……発情期はこの間終わったばかりで油断してました」
「別に……あんたのせいじゃないだろ」
悪いのは誰か、なんて答えはない。
子供が親を選べないように、性別だって選べないのだから。
「それより、あんたさ……」
「はい」
「あんたは分かってんの?」
発情期が終わったばかりのΩが発情するなんて、原因は一つしかない。
その理由をコイツはちゃんと理解してるんだろうか。
「あ……えと……」
ハンカチを結んだ後、ソイツは困った顔をして俯いた。
この顔はきっと理解している。俺達がどういう関係なのかを。
「今日の事は忘れませんか?」
ソイツの言葉に頭が真っ白になった。
何を言ってるんだ、コイツは。
忘れるってなんだ?無かったことにしろって事か?
「出逢わなかった事にして下さい」
「何で……」
何で平気な顔でそんな事言えるんだよ。
そりゃ、オレだって運命の番なんか信じてなかった。でも出逢ったんだ。
頭で考えるより本能が、コイツなんだと訴えている。
薬を飲んでフェロモンを抑えた今でさえ、その項に噛み付いて自分だけのものにしたいと感じているのに。
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