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第24話
「ほら、腰が入ってない!それじゃ、凄腕の騎士にはなれないぞ」
真っ赤な髪を揺らして、同じく真っ赤な髪の少年の尻をぺちんと叩いて飾り剣を振らせている。
「騎士にならないし、オレは王様になるんだからね」
少し高い声で偉そうな口調で言う少年に、彼は再度その尻を叩く。
「お父上は武勇もある王なのだ。その名前に恥じないように剣の修行もするのだ」
今はカムルは、町の中にある道場の主である。
あの後、子供を無事に出産した後に、後宮にあがる話を断り、武道を教えたいと王に懇願したのである。
「あんまり鍛えすぎて前線を一人で突き進まれるような馬鹿王になっても困るのだが」
銀色の髪を纏わせて、相変わらず派手な身支度で道場にサルバトーレは入ってくる。
美しい顔の額には無残な傷痕が残っていて、それを見る度にカムルは胸を潰されそうな心地になる。
あの夜、兵士に突撃されたカムルをサルバトーレは庇ってくれたのだ。
一人で帰したカムルのことが気になり、儀式を終えてすぐに獣化して後を追ってくれていたのだという。
大狼であれば駱駝に追いつくことは造作もない。護衛たちの反対を押し切り、追いついたところであの状況に出くわしたのだ。
派手に切れた額の傷は治らなかったが、これは我が子を護った証だと誇らしげにサルバトーレは語った。
「またお忍びですか……。貴方の場合はあまり忍んでないのですけど。……王宮には後で行きます。貴方は少しは待てないのですか」
いつも王宮にあがる日に迎えにくる一国の王に、ため息をつくがカムルは嬉しさを隠さずに笑みを浮かべる。
「父上、オレ少しは強くなったよ。ねえ、見てってよ」
ぐいぐいと快活な息子に腕をひかれて、道場の特等席にサルバトーレは座った。
「ああ……お前が大きくなったら一番大事なものを護れるように、強くなれよ」
サルバトーレの言葉に、カムルは深く頷いて手にしていた剣を構えて騎士の誓いをその背中に再度繰り返した。
貴方と貴方の宝を生涯まもれるように、と。
【〜完〜】
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