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第50話:本と個展とオリンピック9
「もっと、してください」
彼の左手の動きに合わせて、ゆっくりと腰を揺らす。
「んっ、ふ……」
後ろの快感に引っ張られるように、前からも先走りが溢れ出していた。
「ヤバいなミズキ……。俺は、お前のその顔見てるだけでイキそう」
相楽さんが頬を緩め、ため息をついた。
「見てるだけじゃ、嫌です」
「うん……」
後ろから指を引き抜き、こめかみにキスをされる。
「もう、いけそうか?」
相楽さんの指の間に、スキンの袋が挟まれていた。
「多分……」
震える声で話しながら、現実感が伴わない。
「……分かった」
相楽さんは僕の両膝を持ち上げると、正面から体を合わせてきた。
硬い先端が当たり、ローションで濡れた入り口がこすれる。
指で慣らしていたおかげか、僕のそこは素直に、彼の猛りを受け入れた。
「あ、は――…」
けれども押し入ってくる大きさに、息が止まってしまう。
引き裂かれるような痛みで我に返り、不安に襲われた。
(こんなの、入るのか……?)
恐怖と鳥肌とが全身を襲う。
ところが興奮と不安を宿した彼の瞳を見た途端、もうどうなってもいいと思ってしまった。
相楽さんもきっと、初めてのことに怯えている。
この人の弱いところ駄目なところ、そしてそれを覆い隠す強がりと、痛々しいほどの芯の強さを、僕は愛している。
「相楽さん」
「ミズキっ……!」
背中を抱きしめられ、深い部分で体が交わる。
体の奥に張り詰めた痛みと、好きな人の息づかいを感じた。
相楽さんの額を汗が伝って、星のようにきらめいて落ちる。
「あ――…」
繋がれたことにホッとして、涙があふれた。
「……っ、痛いか?」
「嬉しいです」
「ミズキ」
「あなたが好き……」
相楽さんはゆっくりと確かめるように腰を揺すり、また奥へ進んでくる。
「あ、ん……」
「俺も、ミズキが好き」
腰を優しく揺らしながら、目尻にキスをされた。
(嬉しい、好き、幸せ……)
内側を熱くこすられるたびに、甘い想いが体中に積み重なっていく。
そして、だんだんと怖くなる。
こんな幸せが、永遠に続くはずがない……。
「ミズキが、女だったら……今すぐ孕ませてやるのにな」
痛みが伴うほど深く貫いて、相楽さんがつぶやいた。
「それ……どういう意味で言ってます?」
「……意味なんてない」
返ってくる声が、暗く陰って聞こえる。
不安が重くのしかかる。
その夜相楽さんは内側に名残を刻むように、僕を何度も抱いた――。
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