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第1話
朝、いつも通り三人で登校する。けど、明日も同じとは保障されない最後の日。
五年生になったばかりの時、適性検査をして、結果が出るのが明日だ。俺は心が落ち着かず、友人二人も触れようとせず、昨日のテレビの話をしている。
「でさ、和も昨日見たでしょ?してみよう」
「・・・・」
「和?」
「どうした?」
ぼーっと歩いていた俺に二人は不思議そうに顔を見合わせる。
「・・・」
三人とも黙り出す。わかっているのだ。最後の日だと。みんな心の奥底では意識しているのだ。
「ごめん、やめようって言ってたよな、昨日。いつも通りにしようって約束してたのに」
「仕方ないよ」
「和!始!とりあえず、走ろう!何も考えずに走ろう!」
五十嵐 雪がにっこりと笑って、走り出す。そうだ走ろう。悩んだって変わらない。俺、三島 和人も走り出す。そのあとに焦るように一ノ瀬 始も走り出した。
教室に入るといつもよりもみんな緊張していた。世界中の差別の中に組み込まれることを不安がっているんだろう。αは国を動かしたり、会社を動かしたり偉い地位にいく、βはそれに従い続ける駒になる。そして、Ωは、子供を作るための道具になる。
チャイムがなり、扉が開く。βの担任の先生が入ってくる。俺たち三人はどうなってしまうのだろうかと、俺は先生の顔を見つめる。
「静かにー。席につけー。・・・・まぁ仕方ないか、落ち着かないだろうし、ちょっと早いがうちのクラスは始めるか」
先生の発言にざわざわと小声でみんなが話し始めるが、先生は気にせずに話を進める。
「まず、おさらいをする。αに選ばれた者、Ωに選ばれた者は、明日から特別授業が始まる。まぁ中学までは自分たちについての勉強しかないからしっかり向き合えよ。βは今のまま勉強する。小学生の間はαだろうがβだろうがΩだろうが一緒の学校だ。中学からは強制的に別々の学校だ。今を楽しめよ。」
いつの間にかみんな先生の話を真剣に聞いていた。そして、出席番号一番から呼ばれ、一人ずつ封筒を受け取っていった。
「全員受け取ったな。まずは自分で見ろ。動いていいというまで動くな。わかったな。」
封筒から一枚の紙を出して、周りに見られないように覗くように小さく開いて見ると「β」という文字が見え、安堵し、ちゃんと紙を広げた。そこにはβであること、将来結婚し子供を産むことに専念せよと今の国らしい文章が書いてあった。将来を考えるなんて俺には早すぎるなと苦笑いして封筒に紙を戻して、周りを見渡した。遠くにいる始は無表情で紙を机に伏せて先生を見つめていたし、雪はあからさまにホッとした表情で紙をまじまじと見つめている。早く二人の結果が知りたい。
「受け止めろ。それがお前たちの運命だ。規則を守らない者は罰せられる。自由はある。希望を持て。・・・・動いていいぞ」
先生の言葉は俺には何のことだかわからなかったが、動いていいことはわかったのでとりあえず雪のところに向かった。
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