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第1話 始まり
学校勤務の帰り道。
春の夕日が落ちていく中、河原沿いを歩く。もう4月も終わりかけて、初めて保険の先生デビューをしたが、思っていた以上に仕事は地味だった。
『ガガガ』
毎日通る道で、奇妙な音が微かに耳に届いた。コンクリートの上を重い物が引きずるような、歪な音。
『終わらない』
コツンと丁寧に重いものをコンクリートに置いた音が聞こえて、若い男の声が聞こえた。教師としてか気の利いた大人としてかわからないが、手伝いに行かなくてはいけない気がした。頭で考えるより先に身体は動き、高架下の影になっている部分を目指して歩いていた。
「すみませーん、大丈夫ですか?」
『来てくれたんですね』
影を恐る恐る覗き込んで声をかけたら、返事はするものの誰もいない。というか高架下には重そうなものもないし、床は土だ。何かがおかしい。
『壁を見てください』
逃げ出したくても身体は言うことを聞かず、素直に壁に目線を向けた。何も変なところはなかった。
「あれ?」
じっと見ていると、文字らしきものが見えるような見えないような、いや何かが書いてある気がして壁に近寄った。
「なんだ、この文字・・・」
日本語ではない、文字というにもおかしい線が薄くかいてある。壁に手をつけて、何が書いてあるのか必死に考えた。
考えて、考えて、その壁の線で頭がいっぱいになった。
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