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第1話 プロローグ

学校へと続く坂の手前で車を降りる。チラリと運転席の方を見てから、桜並木が続く坂道をゆっくりと登り始めた。 今年の桜は開花が早かったので、入学式の今日は満開を過ぎて散り始めてしまっている。次から次へと花びらが舞う光景に、少しの間、足を止めて見入る。 ふと視線を感じて横に目をやると、ポカンと口を開けて僕を見ている人がいた。制服が真新しいから、彼も僕と同じ新入生だろう。 僕が首を傾げてみせると、ハッとした後に、何故か顔を赤くして足早に坂道を登って行ってしまった。 ーーまあ、じろじろと見られる事には慣れているけど…。 一つ溜め息を吐いてから、再びゆっくりと坂道を進んだ。 ここは県内でも指折りの、私立の男子高校だ。ここに合格する事を条件に、家から出る事を許してもらった。 あの家から離れた事で、ほんの少し、息苦しさから解放される。 家から離れる時に、あそこで暮らし始めてからずっと僕の世話をしてくれている蒼一朗(そういちろう)もついて来た。 彼が傍にいてくれるから、僕はまだ生きている。

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