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第29話 僕の望み ※
この学校では、夏休みに入る前に文化祭があるらしい。
今週から準備が始まって、放課後に部活に行く人は出来るだけ、それ以外の人は毎日作業を手伝わないといけない。
学年毎にやる事は事前に決まっていて、一年生は展示物だそうだ。二年生はゲームで、三年生が飲食店をやる。
僕のクラスは中々決まらなくて、二、三個上がった意見の中から【宇宙】がテーマの展示物を作る事になった。
大輝が「文化祭は一緒にまわろう」と言ってきたけど、僕は当日、休むつもり。中学の時も参加したことはない。
だからと言って、作業を手伝わない訳にはいかないから、クラスの誰かが買い出しに行ってくれた材料で、指示された通りに作業をしていった。
大輝はずっと僕の傍にいて、僕が重い物を運んだり、釘やノコギリを使う時は、全部代わりにやってくれた。
「燈が怪我をしたら嫌だから」と照れ臭そうに笑っていた。
その顔を見てると、またどうしたらいいかわからない感情で、胸が苦しくなった。
「明日の金曜日は、文化祭の準備作業で怪我などをする生徒が、放課後に保健室に来るかもしれない。だから午後の授業の時に保健室においで」
と、前日の昼休みに澤井先生に言われてた。
だから僕は、四時間目が終わると大輝に、
「頭が痛くてしんどいから、午後の授業は保健室で休んでるって言っててくれる?」
と頼んだ。大輝は心配そうに「大丈夫?」と僕の額に手を当ててきたので、慌てて「休んだら治るから」と言って席を立った。
後ろから大輝が、
「放課後迎えに行くね」
と言ってきたから、僕は前を向いたまま頷いて教室を出ていった。
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