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あとがき、みたいなもの

 みなさま、はじめまして。伊吾盾子です。  まずは感謝を。こんなに長い物語におつきあいいただき、本当にありがとうございました。  そして、もしこのページを最初にクリックしたという方はぜひ、ブラウザバックして本編からお読みください。作者が感涙にむせびます。本当に。  「毒麦探し」というこのお話は、「恋人を失った男が、新しい恋を通じて生きる意味を見つけ、幸せになる」というしごく単純なテーマから始まったのですが……結果はすでにご存知の通り。私の趣味(歴史、ミリタリー、ミステリー好き)が全開して、とんでもないことになってしまいました。  でも、悔いはありません!(コラ)  さて、ここからは少しネタバレというか、裏話を語ります。これまた結構長いので、興味とお時間のある方はどうぞ。  本編に登場する人物の何人かには、モデルというか、実在の人物の歩んだ道が投影されています。一人有名どころを挙げると、元駐日大使のエドウィン・O・ライシャワー博士。ハーバード大学院を卒業した秀才で、戦後、駐日大使を務めた人物ですが、実は宣教師の父を持つ「日本生まれ(BIJ)」で、若い頃にはヨーロッパ留学の経験があり、そして第二次世界大戦中はアメリカ陸軍少佐として、アメリカ本国で日本語のできる人材の養成や情報分析の仕事を担っていました。はい。みなさまお気づきのように、主人公のひとりダニエル・クリアウォーターの経歴は、かなりの部分が彼に負っています。  またクリアウォーターが率いるU機関(ユニット・ユー)にもモデルがあります。占領期、実際にGHQの参謀第二部の下にあったZ機関(別名:キャノン機関)がそれです。ジャック・Y・キャノン中佐が率いる組織で、さまざまな諜報の仕事に携わったらしいですが、その全貌は明らかにされていません。ただ、そこに所属していた人物がまとめた記録が出版されていて、ある程度のことは知ることができます。  この物語を書くために、第二次世界大戦や占領期の日本、また日系二世たちに関する本をずいぶん読みました。それらはまとめてこのページの最後に掲げていますので、ご興味のある方は最寄りの図書館などで探して手に取ってみてください。  もっとも、本は最重要資料とはいえ、それを読んでも分からないことが多々ありました。たとえば、ウィリス・ジープの細部がどうなっているかとか。知りたくて、タ〇ヤのプラモデルを買ってきて組み立ててみたり、それでもあきたらずに、実物が展示されている愛知県の某車の博物館まで足を運びました。実際に展示されていたのはウィリスMBではなく、フォードGPWだったんですが、ほぼ同型という話なので、とりあえず三十分くらいひたすらジープだけ鑑賞して、写真をどっさり撮って帰りました。ええ。係の人に、間違いなく不審者認定されていたと思います…。また、こういう博物館は併設の図書館にその分野に特化した本が収蔵されているので、おすすめです。  また本編の前日譚というか、先行する話を実は先に書いていました。主人公のひとりジョージ・アキラ・カトウが所属していた日系人から成る442連隊の物語で、脚本の形で仕上げた後、年一で映画脚本を募集している某賞に応募しました。結果は順当に二次落選でしたが、この物語にカトウとハリー・トオル・ミナモリ、そしてジョー・S・ギルが登場していました。  そしてその一部が、本編の第3章に再利用されたという次第です。  さて、応援して下さった方々のおかげで今回なんとか無事にゴール地点にたどり着けました。続きの話など、一応、考えているのですが、資料あさりとか、構成はほぼ白紙状態なので、いつ日の目を見るか分かりません。  本編でわき役だった不機嫌男とカメラ・アイ青年のことも書きたいことは書きたいんですが…本当に、年単位でお待ちいただくことになりそうです。  最後に。改めて、読んでいただいた方に感謝を申し上げます。  ではまた、別のお話でお会いできれば幸いです。  伊吾盾子拝 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー [参考文献] ①アメリカにおける日系人とその強制収容及び日系兵士、語学兵についての関連書籍 荒了寛『ハワイ日系米兵』平凡社、一九九五。 イノウエ、ダニエル、ケン著/森田幸夫訳『ダニエル・イノウエ自伝』彩流社、一九八九。 移民研究会編『戦争と日本人移民』東洋書林、一九九七. 牛島秀彦『ハワイの日系人 真珠湾体験からの出発』三省堂、一九六九。 菊池俊之『二世部隊物語』グリーンアロー出版社、二〇〇二。 菊地由紀『ハワイ日系二世の太平洋戦争』三一書房、一九九五。 キクムラ=ヤノ、アケミ編/小原雅代訳『アメリカ大陸日系人百科事典 写真と絵で見る日系人の歴史』明石書店、二〇〇二。 宍戸清孝『Japと呼ばれて』論創社、二〇〇五。 白岩広行・平本美穂「ハワイの日系/沖縄系社会にみられる日本語の特徴」朝日祥之・原山浩介『アメリカ・ハワイ日系社会の歴史と言語文化』東京堂出版、二〇一五、五九―八八頁。 ドウス昌代『ブリエアの解放者たち』文藝春秋、一九八三。 パッシン、ハーバード著/加瀬英明訳『米陸軍日本語学校 日本との出会い』ティビーエス・ブリタニカ、一九八一。 ハリントン、ジョーゼフ、D著/妹尾作太訳『ヤンキー・サムライ 太平洋戦争における日系二世兵士』早川書房、一九八一。 堀江誠二『ある沖縄ハワイ移民の「真珠湾」』PHP研究所、一九九一。 マクノートン、J、C『もう一つの太平洋戦争―米陸軍日系二世の語学兵と情報員』彩流社、二〇一八。 マツオ、ドロシー著/新庄哲夫訳『若者たちの戦場 アメリカ日系二世第442部隊の生と死』ほるぷ出版、一九九四。 マニング、モリー、G.著/松尾恭訳『戦地の図書館:海を越えた一億四千万冊』東京創元社、二〇一六。 毛利恒之『虹の絆 ハワイ日系人母の記録』講談社、二〇〇八。 柳田由紀子『二世兵士激戦の記録 日系アメリカ人の第二次世界大戦』新潮社、二〇一二。 矢野徹『442連隊戦闘団 進め!日系二世部隊』角川書店、一九七九。 ヨネダ、カール『マンザナー強制収容所日記』PMC出版、一九八八。 ヨネダ、カール『アメリカ一情報兵士の日記』PMC出版、一九八九。 渡辺正清『ゴー・フォー・ブローク! 日系二世兵士たちの戦場』光人社、二〇〇九。 Conrat, Maisie and Richard, Executive Order 9066 : the Internment of 110,000 Japanese Americans, California Historical Society, 1972. Murase, Ichiro, Mike, Little Tokyo: One Hundred Years in Puctures, Visual Communications/Asian American Studies Central, 1983. ②第二次世界大戦、特に太平洋戦争の関連書籍 池田清編/太平洋戦争研究会著『図説太平洋戦争(増補改訂版)』河出書房新社、二〇〇五。 ウィロビー、C、A著/延禎監修/平塚(木+正)緒編『GHQ知られざる諜報戦―新版・ウィロビー回顧録』山川出版社、二〇一一。 片山厚志、NHKスペシャル取材班著『密室の戦争:日本人捕虜、よみがえる肉声』岩波 書店、二〇一六。 加藤正夫『陸軍中野学校』光人社、二〇〇六。 河野仁『<玉砕>の軍隊、<生還>の軍隊 日米兵士が見た太平洋戦争』講談社、二〇〇一。 後藤寿一監修『図解太平洋戦争』西東社、二〇一二。 小林英夫『関東軍とは何だったのか 満洲支配の実像』中経出版、二〇一五。 斎藤充功『証言 陸軍中野学校―卒業生たちの追想』バジリコ株式会社、二〇一三。 ダワー、ジョン、W『容赦なき戦争 太平洋戦争における人種差別』平凡社、二〇〇一。 中田整一『トレイシー 日本兵捕虜秘密尋問所』講談社、二〇一二。 畠山清行著/保阪正康編『秘録陸軍中野学校』新潮社、二〇〇三。 原勝洋・北村新三『暗号に敗れた日本』PHP研究所、二〇一四。 マッカーサー、ダグラス著/津島一夫訳『マッカーサー大戦回顧録』中央公論社、二〇〇三。 山本武利『日本兵捕虜は何をしゃべったのか』文芸春秋、二〇〇一。 リンゲマン、リチャード著/滝川義人訳『銃後のアメリカ人:1941~1945』悠書館、二〇一七。 ③銃器、軍用車、その他軍装の関連書籍 大塚康生編『JEEP JEEP JEEP ウィリスMB、フォードGPW写真集(月 刊HOBBY JAPAN2月号別冊)』一九八三。 かのよしのり『銃の科学 知られざるファイア・アームズの秘密』SBクリエイティブ、二〇一二。 村上和久著『イラストで見るアメリカ軍の軍装 第二次世界大戦編』イカロス出版、二〇一八。 歴史群像編集部『超ワイド&精密図解 世界の軍用銃図鑑』学習研究社、二〇一七。 『月刊モデルアート 特集ジープ・ウィリスMB』五〇七号、一九九八。 ④占領期日本についての関連書籍 明田川融訳・解説『占領軍対敵諜報活動―第441対敵諜報支隊調書―1945年8月~1950年6月』現代史料出版、二〇〇四。 延禎『キャノン機関からの証言』番町書房、一九七三。 太田稔企画・構成『重ね地図シリーズ東京 マッカーサーの時代編』光村推古書院、二〇一五。 織田文二著/茶屋義男監修『看守が隠し撮っていた巣鴨プリズン未公開フィルム』小学館、二〇〇〇。 実松譲『巣鴨 スガモ・プリズン獄中記録』図書出版社、一九七二。 週刊新潮編集部『マッカーサーの日本』(上・下)新潮社、一九八三。 太平洋戦争研究会編著『開封された秘蔵写真 GHQの見たニッポン』世界文化社、二〇〇七。 竹前栄治『GHQ』岩波新書、一九八三。 ダワー、ジョン『敗北を抱きしめて』(上・下)岩波書店、二〇〇一。 七尾和晃『闇市の帝王』草思社、二〇一一。 林博史『BC級戦犯裁判』岩波書店、二〇〇五。 諸河久『都電系統案内―ありし日の全41系統』ネコ・パブリッシング、二〇〇一。 『軍都東京 占領下の東京(洋泉社MOOK)』洋泉社、二〇一五。 『実録日本占領(歴史群像シリーズ79)』学習研究社、二〇〇五。 『昭和―二万日の全記録(第8巻) 占領下の民主主義―昭和22年〜24年』講談社、一九八九。 『東京人 特集「ヤミ市を歩く」』358号、二〇一五。 ⑤戦前の日本の阿片栽培についての関連書籍 倉橋正直『日本の阿片戦略 隠された国家犯罪』共栄書房、一九九六。 倉橋正直『阿片帝国日本』共栄書房、二〇〇八。 佐野眞一『阿片王 満州の夜と霧』新潮社、二〇〇八。 山本常雄『阿片と大砲 陸軍昭和通商の七年』PMC出版社、一九八五。 ⑥その他、時代をまたぐもの 春名幹男『秘密のファイル CIAの対日工作』(上)、新潮文庫、二〇〇三。 ライシャワー、エドウィン、O著/徳岡孝夫訳『ライシャワー自伝』文芸春秋、一九八七。 ※その他、Wikipediaを含む多数のウェブサイトを参照しました。

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