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第3話(完)
「どうしたんです?」
「手を……外してくれないか? うまくできない」
「仕方ないですね。縛ったままでっての、ちょっとやってみたかったんですけど」
不穏な発言に、私が眉根を寄せて睨むと、桐野がふっと優しく微笑んだ。
その表情に、不覚にも胸が騒いでいる。
ネクタイを緩めて戒めを解くと、桐野が耳元で囁いた。
「尻を俺に向けて、跨がれます? 貴方が俺のをしゃぶっている間に、俺も貴方をぐちゃぐちゃにほぐしてあげますよ」
私がなんとか頷くと、再び桐野はソファに横になった。その上でおそるおそる私は彼の顔に向けて、腰を下ろした。
バックルからベルトを外して、前建てを開ける。黒い下着から大きく盛り上がった桐野の中心を見て、喉が鳴った。
今の私はきっと、快楽で頭のネジが緩んでいるのだ。でなければ、同じ男の興奮したソレを見て、唾液なんぞ出るはずがない。
「和巳さん、早くしてください」
桐野が催促して、くいっと腰を上げる。私は彼の下着に手を入れて中心を取り出した。自分とは違う猛りきった雄の象徴に、私は唇を近づけていった。
先端をちゅっと吸ってみる。口の中に入った塩気のある苦味にえづきそうになったが、こらえながら舌を出して上下に舐めていった。ピクリと微かな動きに、少し興奮する。繰り返し舐めていけば、桐野は一段と硬くなっていった。
「舐めてばかりいないで……ちゃんと口に入れてください」
命令する桐野の声が、少し上擦って掠れている。その声に後押しされるようにして、口腔に桐野をくわえ込んだ。歯を立てないように口を窄めて、吸い上げるように頭を動かす。猛った楔はますます硬くなり口の端が痺れてくる。それでも、桐野が興奮している様に煽られて、扱くように激しくしゃぶる。
「いいよ……和巳さん……素敵です」
「ん、んんっ……ぁあっ!」
後庭に湿った熱い感触に、思わず桐野自身から唇が離れて声が出た。
聞こえる水音で、窄まりに桐野の舌が挿っていくのがわかった。うねうねと指とはぜんぜん違う感触と熱に、脳みそが蕩けてしまいそうな愉楽に襲われる。
「ゃっ!……あっ……桐野……そんなこ……と……やあっ!」
「和巳さん、口がお留守だよ」
腰を上げてやめさせようとしたが、がっしりと固定されて動けない。そんな時に、尻を叩かれて催促されてしまい、再び桐野自身に唇を寄せてそれを口に含んだ。私が口と舌を動かせば、それに合わせるように中で桐野の舌が蠢いてかき混ぜるような動きをする。もっと刺激が欲しくて懸命に吸い上げれば、お返しのようにして、舌だけでなく指までも入れられて中を擦られた。
送り込まれた唾液のせいで、さっきの桐野の言葉通り、中がぐちゃぐちゃに蕩ろけていく。私は口をきつく窄めて、喉奥まで桐野の中心を迎え入れた。
「わかりますか? 和巳さんのここ、もう指3本も呑み込んでる」
「んんっ……ん、ん」
「柔らかくなっているのに、絡みついてきて……本当に、いやらしい躯ですよね」
ぴちゃぴちゃと、私が桐野をくわえる音とは違う水音に、羞恥心のあまり頭が沸騰した。侮蔑の言葉ですら、躯を熱くさせてしまう。桐野の言うことは正しい。私は本当に淫乱なのかもしれない。
なぜなら、私の内壁はもう桐野の指では満足できずにいる。もっと太く逞しいもので貫いてほしいと蠢いている。はしたない。どうしようもなく欲しい。
「あっ……き……りの……いだ」
私は、くわえていた桐野の雄を離して、息も絶え絶えに訴えた。だが、唇が麻痺したようになっていて、うまく喋れない。
「どうしました? 和巳さん」
問いかけてくる桐野の声は、どこまでも優しい。だから、私は羞恥心をかなぐり捨ててもう一度告げる。懇願の言葉を。
「お願いだ……桐野」
私は唇を舐めて、振り返った。手を桐野の中心に添えて扱く。
もっと硬くなって、私の身の内を突き刺して欲しいから。
私の臀部から顔を離して、上半身を起こした桐野の喉がゴクリと鳴った。媚びてもいい。すり寄るくらいする。もう、だめなのだ。腰の奥が熱く疼いて仕方がない。
「コレを、挿れて……桐野。早く、これで……犯してくれ」
「和巳さん……っ!」
ガバッと身を起こして、桐野が背中から抱きかかえた。顎を掴まれて振り返った体勢で噛みつかれるような口づけが施される。夢中で舌を絡めていると、窄まりに熱く脈打ったモノを押し当てられた。
「んんっ……ふっ……んああっ!」
「和巳さん……っく……」
待ちわびていたかのように、私の入口は先端を簡単に呑み込んでいった。自分の重みで一気に奥まで貫かれた。
「ああっ……あ、あ」
「すごい……いいですよ。和巳さん」
中に納まっただけでは、満足しない。
私は自ら腰を動かしてイイところに当てようとした。下から絶妙のタイミングで桐野が突き上げてくる。躯の芯まで快感に浸されたような感覚は、女の膣に挿れるだけでは得られない悦楽だ。
「あ、ああっ……桐野、も…と……もっと、突いてくれ!」
「こうですか?」
「ああっ!……いい……イイ…き……りの」
「俺も……イイですよ」
ケダモノのように、激しく求め合う。突き上げて、かき回して、揺らめかして──快楽を貪っていく。
何度となく白濁を吐き出して、意識が遠のく時、桐野が囁いた。
「もう──俺から離れられないでしょう?」
その言葉に、今度は頷くしかできなかった。
ハナレラレナイ。
声にならない呟きを紡いで、私の意識はそこで途切れた。
END
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