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第2話
低い声で耳元に囁かれ、そこから走る痺れに堪えきれず躯がびくつく。硬くなったしまった下肢に、さらに熱く硬く猛った桐野自身を押しつけられて、腰をゆっくりと回された。新たに施される快楽に、条件反射のように私の腰が私の意志を無視して揺らめいた。
クスクスという笑い声にですら、耳元でされてしまえば反応してしまう躯が、吐き気がするほど厭わしくてたまらない。
「感じているくせして」
蔑んだような口調に理性が呼び覚まされて、必死に頭(かぶり)を振って否定する。突き飛ばしたくても、躯は既に桐野の愛撫に翻弄されていて、満足に力が入らないのだ。だから言葉以外で拒否を示すには、こうするしかなかった。
再び唇を塞ごうと近づいてきた桐野を、顔を背けて拒んだ。そんな私に、桐野が不機嫌になっていくのがわかった。
「反抗的で可愛くないですね」
桐野はそう言うと、徐に私のネクタイを引き、結び目を片手で解きほぐした。そして、鮮やかな手つきで私の両腕をそれで縛り、背後のソファーへ私を突き飛ばした。上質なクッションが難なく私を受けとめた。
「なにをするんだ!?」
「木崎常務が反抗的だからですよ」
起き上がろうとした私を、桐野が上から覆い被さって阻止する。瞳には、獰猛な雄の姿が見え隠れしていた。桐野の肩に縛られた両腕を突っ張ったが、あっけなく頭上にもっていかれてしまう。さらに下肢にのしかかられて、たちまち身動きできなくなってしまった。
「とにかく、これを解きたまえ」
「嫌です」
「桐野君!」
「じゃあ、素直に認めたらどうですか? 貴方は──俺から離れられないって」
桐野の言葉に、私は目を見開いて彼を凝視する。
何を言っているのだ? この男は。私がお前から離れられないと?
「俺なしでは満足できない躯だって」
そんなことはない。あるはずがない。
だが、それならなぜ私はこの男を激しく拒まないのだ? 呼び出されたらこうなる事がわかっていて、尚且つそれを屈辱と感じるのに、なぜ私はわざわざ出向いてきたのだ? なぜ、この男にこうして見つめられるだけで──躯の奥が疼いてしまうのだ?
「こんなになっているのに」
ワイシャツ越しに胸を弄られる。不本意にも私の乳首はすでに硬く尖っていて、桐野の指はそこを容易く捕らえてしまった。
「うっ……」
「こっちだって、もう我慢できなくなっているくせに」
もう片方の手で桐野は私の硬く育った中心をやわやわと揉みしだいた。さらに、摘まれている反対側の乳首を布越しに口に含まれて、たまらず躯をくねらせてしまう。
「んっ……あ……」
「この奥だって、俺が欲しくてひくついているはずだ──ねえ? そうでしょう?」
私は、唇を噛んで必死に堪える。
これは私にとって、嫌な行為なのだ。身の保全の為に仕方なく繰り返された事なのだ。けっして私自身が望んで行っているのではない。
金や自分の立場を利用して、この男を黙らせることが出来ないから、私は云われるがままに躯を差し出した。それなのに。
この男は、私がこの行為を悦んでいると言い、まともに女が抱けない躯になったと蔑む。いったい、どこまで追い詰めれば満足するんだ。
「ああ……たまらないな。その瞳」
桐野が私の顔まで近づいて、うっとりと呟く。
「凛とした強さを持っているのに、官能的に潤んで……。木崎常務、俺はね……この瞳を見てからずっと貴方に捕らわれたままなんだ」
熱い囁きが、唇と共に私のそこへ降りてきた。軽く啄んでは離れ、また重なる。桐野の唇が重なる度に、私の思考が、理性がうすぼんやりしてきてしまう。
悔しいが、この男のキスはやはり巧みだ。
「だから、貴方も認めてください。俺が欲しいって。俺から離れられないって」
「き……りの……」
「認めて……ね? 和巳(かずみ)さん」
不意に下の名を呼ばれ、私の躯がさらに熱を帯びてきた。急に、どうしようもない欲に駆られる。
──欲しい。たまらなく、この男が欲しい。
だが、桐野の言う通りにただ認めるのは癪だ。だから、私は躯の力を抜いてどうでもいいような口調で言った。
「好きにしたまえ……」
「和巳さん……」
桐野はしばらく私をじっと見つめたあと、クッと喉で笑った。
「今日はそれで良しとしますか」
それから、手早く私のベルトを外して、スラックスのファスナーを開いて、ワイシャツをたくし上げた。現れた乳首をきゅっと摘む。
「ああっ!」
「赤くなってますね……貴方の白い肌によく映えてる」
桐野は親指と人差し指で左右にこねるように摘みながら、スラックスと下着をずらしていった。私は抗わずに腰を浮かして手助けをする。桐野の瞳がより熱くなっていくのがわかった。
「ああ、やっぱり……こんなに濡らして。びしょびしょじゃないですか」
桐野は躊躇わずに、先走りで濡れそぼった私の先端に口づけて、舌を這わしていく。直載な刺激と快感に、我知らず声が溢れ出した。
「ああっ…あ、きり……のっ…!」
突き出すように腰を揺らすと、さらに深くくわえられきつく吸いつかれた。そのまま激しく上下に桐野の頭が動いて、私の口からは意味をなさない言葉しか出なくなる。
「ねえ……和巳さん……俺のも舐めてください」
あと少し、というところで桐野は口を離した。そして、私を抱き起こして膝に跨らせたうえで、そんなことを言う。
まともな状態なら、そんな言葉は無視するところだ。だが、中途半端に放り出された上に、私の先走りで濡れた指で敏感な窄まりを撫でられては、とてもまともでなんかいられない。
「ああっ……」
「ねえ……和巳さんのここに、和巳さんの唾液でぐちょぐちょに濡れた俺を挿れてやりたいんですよ」
桐野の指摘通り、さんざん焦らされた愛撫で私のそこは、はしたないくらいひくついていた。ほんの入り口を指先でつつかれ、いやらしい桐野の言葉に煽られて、もどかしさに腰がゆらゆら動いてしまう。
「ん……桐野……ゃっ」
「ほら、和巳さん……」
私を膝に乗せたまま、ソファに横たわった桐野が私の頭を押さえつける。ベルトを外そうとするが、ネクタイで縛られた両手ではうまくいかない。
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