18 / 63

第18話

教授を追いかける資格もない、そう思った俺は、浴室で膝をついて呆然としていた。 どのくらいそうしていただろう…、ふいにバスタオルがかけられ、顔を上げると、入り口に教授が立っていた。 「いつまでそうしてるの?せっかく雨宿りしたのに、風邪ひくよ?」 眉を下げて、困ったような顔で、教授は笑っていた。 あんなことをしたのに、教授は気を遣ってくれているのだろう。 そんな優しさでさらに胸が痛くなる。 「本当に…、すみませんでした」 「ふふ、僕は大人だからね。許すけど…、2度目はないよ?」 「はい」 「ほら、ちゃんと温まってから出てきなさい」 教授は、膝立ちの俺の頭を撫でると、扉を閉めた。 こんなに優しい人を、もう傷つけてはいけないと思った。 その日は、雨が止み、服が乾いたのを確認して、解散した。 翌日、俺は、何があっても休まなかった教授の授業を初めてサボった。 といっても、その前後のコマに授業が入っていたので、構内にいたけど。 ボーっと、中庭に生えている、『薬草研究サークル』が栽培している草を眺める。 月曜の昼時って、案外人が多いな… 彼らはサボりなのか、はたまた空きコマなのか、よく分からないけど、人通りが多い。 90分もボーっと過ごしていると、心が暗くてもなんとなくウトウトしてしまう。 暖かい陽気に包まれて、舟をこいでいると、肩を揺すられた。 「夏樹ー!!」 「ん?あ、栞ちゃん」 「もう!撫で肩の授業だけは絶対いると思ったのに、サボるなんてダメだよ」 「うん…、ちょっと気が乗らなくて…」 「珍しいね、風邪でもひいた?」 「あー、どうだろ?」 栞ちゃんの相手するの、めんどくさいな…、どっか行ってくれないかな? 教授にとっての俺も、そんな感じだったのかな? それから、1ヶ月、俺は教授を避け続け、栞ちゃんをかわし続けた。

ともだちにシェアしよう!