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第40話

ついたカフェは、テラス席が3席あり、そこから海が一望できた。 「本当に奇麗…、すごいよ澤川くん!!」 「海ではしゃぐ雪さん…」 「は、恥ずかしくなってきた」 「いえ、和みました」 「うっ、また揶揄って。さっきの仕返し?」 「本心ですって。じゃあ、これからの予定、ここでたてちゃいましょう」 「そうだね」 注文した飲み物を飲みながら、パンフレットを確認する。 お店を出た後は、浜辺を歩いた。 「すっげー…、海ってこんな感じなんですね」 「小さいころとか、来なかったの?」 「親は行ったことあるって言ってますけど…、俺の記憶にはないですね」 「そっか。泳がなくて大丈夫?」 「はい。次来たときは泳ぎたいです」 「はは、じゃあ、次は泳ぐ準備しなきゃね」 「はい!約束ですよ?」 「うん」 すると、目の前にビニールのボールが軽やかに飛んできた。 カラフルで目に刺さる派手なデザイン。 「僕のボール!」 それを追いかけて小さい子が走ってきた。 「よいしょっ」 澤川くんがボールを手に取ると、子供に差し出す。 「はい、どうぞ」 「ありがと」 「うん。ケガしないように気を付けてね」 「うん。バイバイ」 「ばいばーい」 澤川くんがニコニコしながら手を振った。 「慣れてるね」 「親戚に子供が多いんで、お盆とか年末年始とか、子守してるんで」 「そうなんだ。いいお父さんになりそう」 「…、まぁ…」 急に元気がなくなった澤川くん。 ちょっとしてから、自分の発言に気づき、焦る。 「あ、ご、ごめん、なんか無神経なこと…」 「いえ。でもまあ、血がつながってるだけが家族じゃないんで」 「え?」 「ふふっ、なんでもないです」 「そう?」 意味は分からなかったけど、澤川くんがまた笑顔になったから、まあいいか。

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