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第1話

◇◇ 始まりはいつだったのか、定かではない。 神様の悪戯なのか、ある時突然変異という形で全人類に、男女の性に加えて三種類の性が生まれた。 エリート気質のα。 平凡なβ。 阻害されるものΩ。 それにより、人類の中の勢力図は様変わりした。 体格や頭脳、容姿などといったものは全く関係なく、世の中の順序は無条件でα>β>Ωという構図になった。 人類の平等を謳うCMやポスターは殆ど無くなり、またそういった思想を持つ者も殆どいなくなったため、Ωである者への差別は人々の中に当たり前のものとして根付いていった。 誰もが皆、それは仕方のないものだというように認識していたのだ。 また、Ωであれば男女に関わらず子を産めるようになった為、人類の数は飛躍的に増加した。 六十億ほどいた人類は、たった百年で、三百億まで数を伸ばした。 しかしそれに伴って、新たに食糧難や住宅難といった問題が生まれ、次第に人類は争いを始める。 それが、“第三次世界対戦”である。 人々は大量の化学兵器を導入し、同族同士で殺戮を繰り返した。 しかし幾ら減っても、人口増加のスピードは中々落ちず、二年ほど平衡状態の戦争が続いた。 そこである科学者が、現状を打開する為、禁忌とされていた異種生物、獣と人類との交配を実験として行った。 ーー実験は、大成功に終わった。 人間と同等の知恵を持ち、獣並みの力を持つ新生物が誕生したのだ。 彼らは“獣人”と呼ばれ、殺戮兵器として、科学者達により急速に数を増やされた。 そして、賢く強い獣人達によって、驚異のスピードで人類は減っていったのだ。 しかしここで、人類にとって予想外の出来事が発生する。 獣人は自らで交配を始め、たった数ヶ月で、人々の想像より遥かに多くまで数を増やしていたのである。 それにより、食糧難、あるいは住宅難は、更に加速した。 獣人は身体が大きい分、人よりも沢山のエネルギーを必要とし、そしてまた、それを発散する場も必要としたのだ。 次第に人類は獣人を恐れ始め、やがて人類は増えすぎた獣人を駆逐する為に、戦争を始める。 それが後に、“対獣人世界人類対戦”と呼ばれるものである。 ーー結果は、人類の惨敗。 当たり前ともいえる結果だった。 瞬く間に人類の数、そして居住空間は減っていき、戦争の始まりから数年で、三百億ほどだった人類は二、三億まで数を減らした。 衰退した人類に変わって、世界は獣人を中心に回り始める。 残された人類は隅に追いやられ、住む場所も食べる物もない劣悪な環境で更に数を減らしていきら今では数百万ほどしかいないとされている。 ーーまさに、人間の傲慢さが招いた悲劇ともいえる結末で、“対獣人世界人類大戦”は幕を閉じたのだった。

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