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第7話

 シャツが舞い落ち、雪肌が天井灯に照り映える。  ばななマンが『乳首出た出た音頭』を歌い、踊った。そして鼻血が垂れるに任せて半裸体を見つめる昴に問うた。 「さあ、可憐なふた粒のチェリーがお目見えとなった。挨拶はいかように」 「つまんで、揉む……かな?」 「タワケ! 羞じらいに全身が桜色に染まるまで、じっくりねっとりと視姦する。焦らし抜くのも愛撫のうちと肝に銘じるのだ」    ばななマンはバナナ型のバイブレータで昴の頭をぽこぽこ叩きながら、攻のイロハを教え込む。 「寒い、風邪ひきそ」    シャツを羽織ろうとした真輝は突然、石膏で塗り固められたように静止した。昴が、ばななマン直伝の欲望ぎんぎら視線で射すくめたのだ。  奥義を究めるには、エロ事師養成ギプスをつけて山野を駆け巡り、厳しい修業を積む必要があるのではないか、と疑問を投げかけるのは野暮というもの。  くどいようだが、本作は行き当たりばったりにストーリーが展開する「やおい」である。  ばななマンが、昴を押しやった。 「かぶりつきで心ゆくまで鑑賞するがよい。ただし決して触れてはならぬ」  昴は胡坐をかいた。身を乗り出したいのは山々だが、言いつけに従い、床に縫いつけられたように佇立する真輝から五十センチの距離を保って、全身に目を凝らす。  それはもう、毛穴さえ見落とさないほどの熱心さで。  真輝がシャンプーをしているときを狙い、風呂場のドアをこっそり開けて覗き見にいそしむのとは違う。  お墨付きをもらったのをいいことに、乳首をガン見して、さらにガン見して、ソラでその模型を作れるまでにガン見した。  真輝は思った。昴を叱責するのが正解の場面なのに突っ立ったままで、おれは木偶(でく)の坊そのものだ。だが熱い眼差しに肌を()かれると少なからずときめいてしまう。  歴代の(といってもふたりだが)彼女たちだって、こんなにも情熱的に見つめてくることはなかった。  免疫がないぶん鼓動が速まるところに持ってきて、実の弟のむらむらスイッチを入れる、という背徳的なシチュエーションの合わせ技に眩暈に襲われるようだ。

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