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第6話

 それを聞いて昴は、原人に先祖返りをしたような表情(かお)で涎を垂らした。ベッドに駆け寄ると、鼻の穴をおっぴろげてクンクンしまくったあげく、大の字にひっくり返った。  言わずもがなだが、ジーンズの中心はモザイクをかける必要があるくらいもっこりしていた。  真輝はあわててシーツをはぎ取り、くしゃくしゃに丸めた。目縁に紅を()いたさまが、すこぶるつきに婀娜っぽい。  おかげで、もっこり度がぐんと増した。 「朝勃ちは健康のバロメータです!」  と、柳眉を逆立てる真輝に一瞥をくれると、ばななマンは、七つ道具のひとつコンドームの封を切った。風船のように膨らませ、ジャンプサーブを放つ。 「モラリストぶっても、ひと皮むけばサカりのついた男。桐原兄よ、ふざけて弟とイチモツの大きさ較べをした憶えはないか。あるいは精液の飛距離を競ったことは」 「……どうせ、どうせ、タッパもチン長も昴に敵いませんよぉだ。コンプレックスを刺激して、イケズ!」    真輝がコンドーム風船をレシーブすると、昴が阿吽の呼吸でスパイクする。  ばななマンが巧みに拾い、ラリーがつづくなかでサザン〇ールス〇ーズのナンバーを口ずさむと、ビーチバレー感が醸し出されて、近くの幹線道路を行き交う車の走行音は潮騒に変じるようだ。 「桐原兄よ、弟とのセックスは罪深いものだと小難しい理屈をこねるがゆえに、ややこしくなる。要はスキンシップの延長と柔軟に考えるのが得策であるぞ」    ファンファーレを奏でるようにコンドーム風船が割れた。  真輝は、ちゃっかり肩を抱き寄せにくる昴の手を払いのけ、ばななマンを睨み返した。  ところで真輝はボタンダウンのシャツとプルオーバーを重ね着していた。万歳、と号令がかかって反射的に両手をあげると、プルオーバーがするりと抜き取られた。  このとき、ばななマンの指は超高速で動いていた。返す刀で胸をはだけるのに要した時間は〇・五秒。

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