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第9話
「唾液をからめた指で乳首を慈しむ。基本中の基本を忘れたのか」
いそいそと実行に移す。確かに湿り気をほどこしたほうが断然つまみやすい。
だいたい、と昴は舌なめずりをした。にいちゃんの乳首はちっちゃくて、少々強めに挟みつけておかないと指の間をすり抜けてしまうのが玉に瑕なんだ。
だけど弾力性に富んでいて、はにかんだ様子でぷっくり膨らんでいくのが、いじらしい。さざ波? が上半身に走って、にいちゃんてば敏感。唇と舌の出番はまだかなあ、わくわく……。
「やめ、なさい。しつこいよ」
真輝は呆れ顔をこしらえると、聞こえよがしにため息をついた。もっとも、ねだりがましげに胸を突き出すようでは説得力ゼロだ。
現にばななマンにかかれば、倫理観という城壁に亀裂が生じたことなどお見通しで、采配を振って兵を動かすように、バナナ型のバイブレータを振り下ろす。
「桐原弟よ、勝機を逃すでない。倦 まずたゆまず乳首をねぶりたおして、性感帯の重要拠点となるよう才能を引き出すのだ」
昴は真輝の正面に回った。ムスコのみなぎりぐあいは当社比百二十パーセント、と記録ものだ。
おかげで、ちゅばちゅば態勢を整えるべく腰をかがめるさいも、縫い目がほころぶほどテントを張ったジーンズが邪魔で、いきおいガニ股にならざるをえない。
ともあれ右の乳首に指を添え、左の乳首に唇を寄せると準備完了。いただきます、と一礼してから慎ましやかな尖りを食み、
「ほのかな塩気が隠し味の、フルーティーな豆粒やあ」
グルメリポーターが憑依したかのごとき感想を述べ、ばななマンがチアリーダーよろしくポンポンを打ち振るさまに勇み立って、れろれろと舌を蠢かす。
それは小手調べで、強弱をつけて吸ってみたり、甘咬みを交えて乳首の育成にいそしむ反面、不安が付きまとう。
窮屈だと、ごねるムスコをほったらかしにしておくと最悪、暴発するかもしれない。もしも醜態をさらす羽目になったら、舌を嚙みちぎって死ぬっ!
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