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第10話
「ぅ、……ふ……ん、あ……」
真輝は、といえば。乳首をついばまれたせつな、隕石が頭を直撃したのに匹敵する衝撃を受けた。
何しろ数分間にわたって幽体離脱をした状態にあったほどだ。ハッと我に返ると足を八の字に投げ出して座り、その足の間に昴が陣取って、一心不乱に乳首を舐め蕩かしている。
ぺろぺろ、ちゅくちゅくと胸元がにぎやかだ。さらに前髪が淫靡、且つ規則正しく肌を掃きあげて掃き下ろす。
あまりにもハレンチな光景に再び意識が遠のきかけた。それでいて乳首を火元に快感という炎が燃え広がり、始末に負えない。
殊に弾くように歯でしごかれると、独りでに腰がくねりはじめるありさまだ。子どものころは蝶結びをするのに手こずっていた昴が、なかなかのテクニシャンに成長するとは感慨深い……じゃなくて!
「にいちゃん、気持ちいいでしょ」
乳首を舐めしだきながら上目をつかうとは、小癪な真似を。いくら、おれが単細胞でも思う壷にはまる返事をするものか、と真輝はいじけモードに走った。
だが、冗談抜きに貞操の危機だ。お婿にいけない躰にされる前にトンズラをかまそう。
昴を突き飛ばしざま身を翻した。
「バックヴァージンもろた」
〝だるまさんがころんだ〟のリズム。それは、標的をその場に釘付けにする最強の呪文だ。
真輝は敷居の手前で、ぴたりと立ち止まった。バックヴァージンもろた、と繰り返し唱えるばななマンに、ぎくしゃくと頭を振り向ける。
「動いた、しかと見たぞ、桐原兄よ。ペナルティは野球拳だ」
つまりジャンケンに負けたほうが一枚ずつ着衣を脱いでいく、という例のあれだ。
「野球ぅ、すぅるなら、こういうぐあいにしやさんせ。アウト、セーフ、よよいのよい」
ばななマンが野球拳ダンスを踊るのを真似て、桐原兄弟も踊りだした。やけくそ気味の真輝にひきかえ、昴は命が懸かっているように真剣そのものだ。
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