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第11話

 ところで真輝はチョキ、グー、パーの順番で出す癖があった。  自覚はしていたが如何(いかん)ともしがたい。昴がわざと負けた一回を除いて(ジーンズを脱ぐためだ)、連敗を重ねたすえに素っ裸に剝かれてしまった。 「にいちゃん、綺麗だ。特にこれ」  ペニスが掬いとられて掌の上で弾む。 「つやつやのすべすべで、先っぽがちょっと濡れてて……しゃぶりたい、しゃぶるよ」 「却下、却下、却下!」  後ずさり、ふくらはぎがベッドの縁にぶつかって足がもつれた。尻餅をついた拍子にペニスがぷるんと跳ね、折しものしかかってきた昴の口の中にずっぽり。 「ん、んんん……!」  根元まで一気に口に含むさまに、腹が立つ以前に切なくなった。おれのはチビっ子サイズなのだろうか。  何を隠そう真輝にとって、これが初フェラなのだが、その相手が実の弟では情けなくて涙がちょちょ切れるようだ。目のやり場に困り、そっぽを向いたところに、ばななマンがカボチャとナスの絵が描かれた色紙を掲げた。 〝仲良きことは美しき哉〟。  螺旋を描くように、あるいは縦横(じゅうおう)に、昴は舌で丹念に輪郭をなぞる。  何事によらず予習は大切だ。真輝が奇蹟的にしなだれかかってきた場合を想定して、棒キャンディを練習台に自主トレに励んでおいた甲斐があった。  さあ、特訓の成果を存分に披露しよう。舌を丸めたり尖らせて、緩急自在に鈴口をノックするうちにしょっぱいのがしみ出してきた。  嬉々として舌鼓を打つと、独特のえぐみが病みつきになる。へそに届くほどにムスコがそそり立ち、亀の頭が下着の縁からこんにちは。 「手持ち無沙汰ではあるな」    ばななマンが真輝の手を摑み取り、強引に何かを握らせる様子が視界をよぎった。その直後、昴の頭の中で七色の光が乱舞した。  とは弾丸を装填ずみで、荒ぶる上にも荒ぶる我がムスコ。  手コキの段取りまでつけてくださるとは、ばななマンよ、至れり尽くせりぶりもここに極まれり。

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