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第28話 最終話

 そして数日後、婚礼の儀は滞りなく執り行われることとなった。  大聖堂の控え室で、儀式用の華美な衣装を身につけたロンロは、式が始まるのをララレルと共に待っていた。 「けどさ、狼たちは、わかってないよな」  虹色の首飾りを身につけたロンロを見ながらララレルが言う。 「何を?」  ロンロが聞き返す。 「お前は虹色狼の血を引いていて、生えかわった毛は前より綺麗になったけれど、一番大切なことに、奴らは気づいていない」 「一番、大切なこと?」 「つまり、お前は不細工なままだってこと」 「あ、確かに」  納得して頷く。今着ている礼服だって、どうみても馬子に衣装だ。 「けど、俺はもう、お妃の座なんて狙わないよ。だって、十三日も王様の相手をして、生き残れる自信はねーや。このまま、従者としてまったり暮らすわ」 「それもいいね」  ふたりでアハハと笑っていると、グラングが家臣と共に部屋にやってくる。 「さあ、準備はできたか。祭壇の女神が私たちを待っているぞ」  グラングは、真っ白な素晴らしく美しい礼服を身にまとっていた。どこから見ても王者の風格を備えた、高貴な白金狼だ。  その純白の手袋をはめた手が差し出される。 「はい」  ロンロは、嬉しさと恥ずかしさに頬を染めながら、王の手に、自分の手のひらを添えたのだった。      ◇  ――狼国に新たな王子が誕生したのは、式から間もなくのことだった。  五人の白金の子供が生まれ、そして翌々年にまた五人。更に六人。 ロンロとグラングは、沢山の子供たちに囲まれて幸せに暮らし、狼国は前にも増して繁栄した。  そして、従者ララレルは子供たちの世話に奔走し、決してまったりとは暮らせなかったのだった。    【終】

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