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第27話
「ロンロ、獣化できるか?」
「え?」
「そのほうがわかりやすい」
言われて、訳もわからぬまま上体を起こす。きしむ身体をコロンと回転させて、犬へと変化した。
「腹を見せてみろ」
グラングが命令する。ロンロは仰向けになって、両足を広げた。
「なるほど、これですか」
老学師、王、そして司教が、ロンロの股間を凝視する。ロンロは恥ずかしさに混乱した。
「い、いったい、これは……」
「確かに、小さいですが、これは明らかに……女神の証」
え? 女神の証?
「ぼ、僕のちんちんどうなっちゃったの」
ロンロは慌てて自分の股間に目をやった。
「性器ではない。ほら、ここだ」
老学師が腹を指さす。
「この、性器の横の、一房の毛。これが虹色なのだ。これはまさしく、太古の虹色狼の血を継ぐ証。ロンロどの、そなたは犬でありながら、祖先に虹色狼の血をわけてもらっていたのだ」
「え? え? ええ」
「こんな場所だったから、今まで誰も気づかなかったのだろう。王しか知らぬ、いや、王でさえ気づけなかった」
「……」
司教が苦虫をかみつぶしたような顔で、しかし厳かに言った。
「確かにこれは女神の証。教会に保管されている虹色狼の毛と同じだ。教会はロンロ様を女神の末裔と認めるしかない」
それにロンロは目を瞠った。
「ロンロ」
王が犬になったロンロの頭をさすりながらたずねてくる。
「お前と私を陥れようとした司教を、お前はどう罰したい?」
その言葉に、司教が急に震えあがった。
「お、お、お許し下さい、ロンロ様っ。知らなかったとは言え」
ガバリと伏せて、頭を床にこすりつける。
「首を噛みちぎるか、それとも生皮をはぐか」
「ひぃぃ……っ」
ブルブル震える司教に、ロンロは可哀想になって答えた。
「あの、えっと、いや、別に、何もしなくていいです。司教様も知らなかったのだし。僕も、毛のことは今までわかんなかったし」
奴隷生活で、薄汚いままだったから気づきもしなかった。
「では、司教よ。我が番の慈悲をもって、今回は不問とする。感謝して一生、ロンロに仕えよ」
「は、は、はいっ」
銀色の耳をぺしゃんこになるくらい倒して、司教が返事をした。
「ロンロ」
王が小さな犬になったロンロを抱きあげる。胸にそっとより添わせると、優しく囁いた。
「これでお前は、私の妃だ。お前と番になったのは、女神の導き。まさに運命であった。どうだ、私と、結婚してくれるか?」
白金の王は、ロンロのやわらかな毛を撫でながらたずねてきた。
「……」
ロンロは周囲を見渡した。部屋にいる全員が、ふたりを見守っている。誰も異を唱える者はいない。そして、皆の顔には王の幸せを願う様子があった。
「……はい」
そっと、小声で答えれば、グラングはプラチナのような輝く笑みを見せてきた。
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