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第1話

求:部員 出:部長の処女     文芸部 毛筆で書かれたそのビラを見たのは、4月も中旬に差しかかるある日の放課後のことだった。 昇降口前の掲示板に、他の部のものに斜めに重ねてそのビラは貼られている。 「なに、処女って……ここ男子校じゃなかったっけ?」 俺が動揺を隠しきれずにつぶやくと、クラス委員の金子くんが糸のような目をわずかにしばたかせて言った。 「これっ……マジなのか!?」 「さあ? マジなのか冗談なのか」 「いや……あの月形ならあり得る……」 ビラを見つめる彼の声は震えている。 「つきがた?」 「文芸部の部長だよ」 「女なのか?」 「そんなわけない、男だよ。けどあいつなら……」 「……?」 意味が分からずに見ていると、金子くんの瞳孔が開き、次第に呼吸が荒くなる。 「金子くん?」 明らかに様子がおかしいと思い、顔を覗き込もうとした瞬間だった。 彼は文芸部のビラに手を伸ばし、それをひったくるように剥がしてしまう。 「え、なに急に……」 「泉くん、きみはこんなの見なかったよな?」 「…………」 「見なかったよな!?」 勢いに押されて頷く。 すると金子くんはそのまま走り出し、校門の外へ飛び出していってしまった。 「なんだよいったい」 俺は首をひねり、もう一度ビラのあった辺りを見つめる。 文芸部の部長が何やら特別なのは分かったが、部員を欲しいがために処女を売りに出すとは何ごとか。 だいたいこの高校ではそんなことが許されているんだろうか。 転校してきたばかりの俺に事情は分からないが、普通に考えてあり得ない。 そう考えると、ここにあったあのビラはゲリラ的に貼られたものに違いなかった。 もう帰ろうと思っていたのに、にわかに興味を引かれる。 「……文芸部か」 俺は昇降口へと踵を返し、さっき脱いだばかりの上履きに履き替えた。

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