29 / 29

告白④

夜明けの太陽の光に照らされるまで、俺達はその場で抱き合っていた。 名残惜しげに抱擁を解くと、楼主様は俺をあの時のように横抱きにした。 「もう『楼主様』ではない。 お前の伴侶だ。ルークと呼べ。」 顔面が崩れそうな笑顔で俺にキスをすると、元来た道を歩き出した。 「…ルーク……」 名を呼ぶだけで身体が火照る。 真っ赤な顔の俺を見ながら、ルークは心から嬉しそうに声を上げて笑っていた。 行きとは違い、堂々と俺の腰に手を回しぴったりと寄り添うルークは、何度も俺の顔を覗き込み、微笑みをくれる。 俺はもう面映ゆくて、どんな顔をして良いのかも分からなくて、縮こまって俯いていた。 また、あの楼閣が見えてきた。 「着いたぞ。」 「お帰りなさいませっ。」 心配そうな顔のイリアスが、寄り添う俺達を見た瞬間、ぱあっ と輝く笑顔を見せた。 従順で忠実で実直なこの部下は、涙ぐみながら 「書類は全て整っております。 後はサインをしていただくだけです。」 と告げた。 少し離れた場所で控えていたアクトはただ頷いていた。 「では、すぐにサインを。手続きを頼む。」 腰を抱かれたまま、ルークの部屋へと連れていかれた。 机の上に置かれた『契約書』と… そして…『婚姻届』!!! ルークは、眼を見張る俺にウインクをして先にサインをすると、俺にペンを持たせ書くように促した。 震える手で書いた2種類の書類。 イリアスは恭しく受け取ると、満面の笑みで祝いの言葉を残し、役所へ飛んで行った。 1年後… 「お前が楼主とできちゃうなんて…はあっ、世の中分からないもんだねぇ。」 西の華花魁となった美鶴さんが、時々遊びに来ては、こうやって揶揄う。 「珍しいお菓子をいただいたんだ、良かったら食べるかい?」 東の華花魁の千尋さんも顔を出してくれる。 様々な事情でやって来て、春を売る高楼の館。 それでも明るい笑い声に満ちたこの場所は、俺達の城。 悲しみも苦しみも喜びも楽しみも何もかも受け入れて、俺はお腹に宿った新しい命と共に、愛するひとと、かつての仲間達と一緒に越えていくのだ。 「明日はみんなでお花見だよ!」 ---了---

ともだちにシェアしよう!