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第1話
自転車をこぐ度にキィキィ鉄が鳴る。
古いコンクリ塀が囲んだ雑草が蔓延る駐輪場に愛車を止めて、こいつもそろそろ修理してやらないとなと、大分くたびれた自転車を見下ろした。
粗大ゴミの日に拾った自転車は大事に使えばまだまだ乗れるけど、愛情はただでもメンテナンスにかかる費用が貧乏学生にはきつい。
駐輪場からアパートの外階段を上がって行き様に集合ポストの蓋を開けると、ダイレクトメールが数冊こぼれ落ちた。俺はため息を吐きながら登りかけた階段を戻り、コンクリに散った封筒を拾い上げる。
そのまま丸めようとして、けれど掌の紙切れに日給一万円の文字が見えた瞬間、思わず封を破いた。
『当社開発の人工知能搭載アンドロイドに日常生活を学習させる、簡単なお仕事です』
日給一万とか、破格じゃないか?
思うと同時にポケットのスマホに手が伸びた。
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