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第1話
「へぇー、シェフが結婚ねー、カレシいるっつってたもんな、いいんじゃない?」
別荘で随分世話になったオネェシェフから、彼に連絡があったのだという。
「そうだな、素晴らしいことだ! 彼らももう付き合って5年以上になる、やっと幸せが巡ってきたんだ」
リビングのソファにごろ寝していた俺の横に、彼が淹れたてのコーヒーを持ってきてくれる。
「え、そんな長い付き合いだったんだ。へぇー」
起き上がってカップを受け取ると、軽く乾杯して一口いただく。
「あ、うまい、腕上がった」
彼がやっと覚えた料理だった。厳密に言えば料理じゃないけど、おだててやらせるためにそういうことにしてる。
ちょっと褒めるとすぐにオーバーリアクションで喜ぶから可愛いもんだ。
「本当か!? 俺はやればできる子だからな!」
「自分で言うなよそういうの」
「自分で自分を褒めないでどうするんだ!」
俺の向かいのソファに腰掛け、同じようにコーヒーを一口すすった。
「我ながら素晴らしい出来だ、カフェでもオープンしようかな」
満足そうにコーヒーの香りも堪能して。
「もう少し修行したらな」
適当に流した。話が途中で逸れたし。
「で、もう籍入れたってこと?」
彼も、そういえば、みたいな顔をする。
「いや、これからだそうだ。結婚式のセレモニーで、届けを書くらしい」
「はぁー、なるほどな。いいじゃん」
「式は3ヶ月後に、相手の国の城でやるそうだ」
「へー、城ね。へー…………城?」
コーヒーを飲む手が止まった。聞き間違いかと思って尋ね返すと、当たり前みたいに「城」と返される。
まてよ、大体にして相手の国ってなんだ?
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