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第2話

「え、ちょっとあのさ、シェフって誰と結婚すんの?」 そういえば誰と付き合ってんのか、あの時聞かなかったんだ。 ローテーブルの上にコーヒーを置くと、自然と頭を抱えるみたいに自分の髪を掴んでしまう。 なんか嫌な予感がする。 「Oh! 知らなかったのか?」 「聞かなかったんだよ、なんか城とか相手の国とかって、どういう系の人なわけ……?」 「そうだったのか、あいつの結婚相手は俺の友人でもあるんだが」 あまりにも自然に、しれっと口にした結婚相手は、数年前に同性愛を告白した、とある国の首相だった。 「はぁあ? マジで? シェフそんなのと付き合ってたのっ?!」 しかもその告白で、未だに何かと話題になっているというのに。 「ええー、そういえばニュースで付き合ってるがいるとかいないとか言ってたけど、まさか身近な奴だったとは…」 「彼らは互いを信頼しあう、素晴らしいカップルなんだ。一国の首相が偏見を恐れず愛を貫き通すのは、なかなか出来ることじゃない」 まぁ、俺たちには敵わないが、なんて笑いながら言うし。 「お前だって、俺と結婚するとき、結構バッシングみたいなのあったじゃん」 一国の首相じゃなくても、世界を股にかける大企業の社長だって、同性と結婚するなんて相当な覚悟を強いられたに違いない。 偏見に晒されるしんどさを、俺もそのとき改めて痛感したわけだけど。 「それを言ったらお前だって、刺青入れたときに、相当おかしな目で見られただろう?」 彼はコーヒーを片手に、穏やかに微笑んだまま。

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