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第53話

「んっ、もぉ……っ」 頭が真っ白になる。纏っているワイシャツとネクタイが、俺の体が揺れるのと同時にふわふわと揺れる。 彼のを奥まで含んだまま、撒き散らすみたいに達した。 「っ、ハニーっ!」 彼もまもなく達して、俺の腹の奥はじんわりと熱くなる。 「はぁ……」 2人して同じようなタイミングで息を吐いて、俺の方はそのまま彼の上に倒れこむみたいに抱きついた。 「うーん、あまりうまく言葉で攻められないな」 お腹いっぱいの俺に対して、彼はなんだか腑に落ちない顔をしている。 「おい、どうした?」 額の汗を拭うでもなく、そのまま彼のほっぺたを両手で包んでペタペタ叩いた。 「昔はもっとねちっこくいろんなことを言えたもんだが、なんだかお前にはうまく言えない」 「はっ?」 「昔の恋人やフレンド達には、もっといろいろと言えたもんだが、なんだかお前には遠慮しちまう」 「あぁ?」 「きっと本当に好きな相手には、そういう薄っぺらい言葉は出てこないものなのかもしれないな」 こんなときに昔の話するか? さすがにちょっと無神経すぎるだろ。イライラをそのまま彼のほっぺたをつねって発散してやる。

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