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第141話
けれど彼はすぐに指を引っこ抜いた。ちょっとヒリヒリした感触が残る。
「きちんとほぐしてやろう」
いつになく低い艶っぽい声がする。
「ここがどれだけ柔らかく俺を受け入れるか、さすがの王子も知らないだろう」
焦点も定まらないくらい側で、彼が微笑んだ。
「あいつの話はしないで」
愛しい彼を目の前に、それ以外の奴の話なんか聞きたくない。まして彼の口からなんか余計聞きたくない。
「お前以外いらない。本当にいらない。だからしないで、他の奴の話は」
思っていることをきちんと伝える。どう思われたっていい。俺のわがままかもしれないけど、ちゃんと伝えた上でなら、どう思われたって構わない。
彼は俺が話している間、目をそらさずにじっと見つめてきて、話が終わった途端に強く抱きしめてくれた。
「あぁ、すまなかった。つい、彼より優位に立ちたいと思ってしまった」
ちょっとした嫉妬心を垣間見せてくる。
「気を悪くさせてすまない」
ため息混じりにいうの声が、心臓のあたりをぞわぞわさせた。
「……優位も何も、お前が一番だから、何にも心配することはないよ」
そんな思いをさせてしまったことを、ただただ恥ずかしく申し訳なく思う。
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