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第148話
「だからちゃんと抱いて、俺のこと」
視点がブレるくらい近くで見つめる。
彼の気持ちを収めることが一番の理由ではあるけど、俺の体の興奮も早く沈めてほしいからっていうのもある。
抱いてほしいなんて、絶対に彼以外に言えないし。
「ハニー、ああ、お前はなんて愛らしいんだっ」
すると彼は、途端にひと叫びして、俺を思いっきり抱きしめてきた。
「いでででで!」
「そんな風におねだりされたら、抱かないわけがないだろう!」
思いっきり日本語で痛みを訴えても、彼のすりつぶすみたいな抱擁は止まらない。
「ばっか!マジでやめろっつうの!」
背中に回した腕が届く範囲内で勢いよく爪を立てる。けれど、彼には全然響かない。
「子猫がじゃれているようだ」
しまいにはそんなことを言うし。
「だから離せっつうの!」
ちょっとイラっとしながら言うけど、それすら可愛いとか言うからもうどうしようもない。
「よしよし、可愛い子猫の機嫌を取らないとな」
鼻の下を伸ばすのも、もうこいつの特技みたいなもんだった。そしてごっこ遊びが好きなのも、ある種特技みたいなもんだった。
「子猫はどうされると気持ちいいのかな? 俺に教えてくれないか?」
殊更優しそうに言う。
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