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闇底に沈む光に9※
ユウキはしぶしぶ店を出た。男より先に階段を降りて、雑居ビルのエントランスに行くと、ガタイのいい男3人が待ち構えている。
……くそっ。
内心舌打ちしながら、3人を無視して外に出る。このままダッシュして逃げ出そうかとも思ったが、アレがある限り逃げてもダメなのだ。
男たち4人が連なって出てくるのを、道端のポールに寄りかかって待つ。
「……で?タクシー?」
「いや。その先に車を停めているよ」
ユウキは首を竦めて
「じゃ、案内してよ」
「ああ。ついてきてくれ」
路地を抜けた先には、こんな場所には似つかわしくない運転手付きの高級外車が停まっていた。男の1人が後部座席に先に乗り込み、次に乗れと肩を押された。ユウキがいやいや乗り込むと、もう一人の男が後から乗ってきて左右で挟まれる。自分を店に呼びに来た男が、最後に助手席に乗り込んだ。
「ユウキくん。君のその名前は偽名かな?」
助手席の男は早速探りを入れてきた。ユウキはそっぽを向いたままで
「源氏名。客とってる時の。それよりあんたは、名前なんて言うの?」
「ああ。失礼。まだ名乗ってなかったかな。斉木…斉木隼人だ」
「ふーん……さえきはやと。そっちも偽名?」
すかさず切り返すと、斉木はふふっと小さく笑って
「そうだね。君と同じ、源氏名のようなものだな」
「ふん。久我の周りで本名なんか名乗ってるヤツはいないよね。名前なんか符牒みたいなもんだからな」
「そう。……そうだね。単なる符牒だ」
両隣の男たちが、ポケットから何かを取り出した。それが目に入ったユウキは顔を強ばらせる。もう散々見慣れたピンク色のボトルとカプセルタイプの薬。
男たちが腕を掴んでくる。ユウキはそれを振りほどこうともがいた。
「それ、今やるのかよ!向こうに着いてからでいいだろっ」
「悪いね、ユウキくん。久我さんのご命令だ。向こうに着いたら直ぐにと、うちの主がご所望なんだよ」
ユウキは頬を引き攣らせ、唇を噛み締めた。
スモークの貼られた窓ガラスは、外から中の様子は見えない。それでも車の中で慣らされるなんて、屈辱だった。
「っ、離せっ」
「無駄な抵抗はするな。縛るぞ」
男の1人が低い声で警告する。
そんな脅しなんかクソ喰らえだ。
ユウキは男たちの手の振りほどこうと尚ももがいた。男の1人が舌打ちして、ゴム製のベルトを取り出す。
こんな抵抗など無駄だと分かっている。でも、大人しくされるがままになるのは嫌だった。
暴れるユウキの手を、男たちが難なく後ろ手にひねりあげ、ゴム製のベルトでひとまとめに縛り上げた。ユウキはそれでも尚、足で前席のシートをガンガンと蹴った。
男が笑いながら、ポケットから性具を次々に取り出していく。
……くそ。おまえのそこは、四次元ポケットかよっ。
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