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闇底に沈む光に13

「起き上がれるなら、こっちに座って食べるかい?」 斉木は手に持っていたトレーを窓の近くの小さなテーブルに置いて、こちらを見た。途端に、腹の虫がグー……っと鳴る。ユウキは恥ずかしくなって慌てて腹を押さえた。 ……ばか。鳴るなって。 斉木と共に部屋に入ってきたのは、コーンスープの匂いだった。食欲をそそる、ちょっとスパイシーな香りも漂っている。 あれからどれぐらい時間が経っているのか知らないが、窓から射し込む光の感じだと、今は朝のような気がする。あの店では、飲み物の他に酒のツマミを少し口にしただけだったのだ。おそろしく腹が減っている。 「食べる」 「手を貸そうか」 「いい。1人で歩ける」 ユウキはそっとベッドから床に降りた。試しにゆっくり両足をついて踏ん張ってみる。大丈夫そうだ。身体にちゃんと力が入る。 用心しながら、窓際のテーブルまで行き、トレーの上を見つめた。湯気のたつコーンクリームスープと、生野菜やスクランブルエッグの乗ったプレートには、ガーリックトーストもある。 「これ、食べていいの?」 「もちろん。お粥もあるよ。食べられそうな方を選んで」 「大丈夫。これ、食える」 ユウキは椅子に座ると、早速スプーンを掴んでスープを掬った。 口に入れてみる。美味い。 フォークを掴んで、今度はプレートの中身をガツガツと食べ始めた。 斉木は少し離れた場所からこちらを見守っていたが、ふふっと吐息だけで笑うと 「流石に若いな。回復力が違う」 ユウキはスープの残りをスプーンで掬って飲み干すと、ガーリックトーストにかぶりついた。こんな美味い飯は久しぶりな気がする。 「若いって、俺の歳、知ってるのかよ?」 口をモゴモゴさせながら聞いてみる。 「うん。たしかまだ20歳にはなってないよね」 斉木の言葉に、ユウキは口を動かすのをやめて、振り返った。 「なんでそんな確信持って言えるんだよ」 斉木はうっすらと微笑んで 「僕は君の本名を知っているから」 ユウキは目を細めて斉木を睨みつけた。 「あんた……誰だよ。斉木って本名じゃないよね。名前……教えろよ」 斉木はおっとりと首を傾げ、しばらく黙っていたが、やがて首を竦めて 「僕の本名は、月城颯士」 「つきしろ……はやと……」 知らない名前だ。ユウキは警戒しながら尚も食い下がった。 「で、俺の本名を何であんたが知ってるんだよ?」 「調べたんだ。大切な友人に頼まれてね」 「友人……。それって、さっきの奴?」

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