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闇底に沈む光に14
ユウキの質問に、斉木…いや、月城はちょっと驚いた顔をした。
「そうか……。覚えているのか。意識はあったんだね」
ユウキは首を竦めて
「うん。見えてたし聴こえてた。ただ、すげぇ怠くて動けなかったんだ、全然」
「それは……薬の副作用だ。君は久我さんから何か麻薬を使われているね」
また確信があるような口ぶりだ。この男はいったい何者なのだろう。
「それより、さっきの美人、誰?」
「ああ。彼は僕の古い友人で、この部屋の持ち主だ」
「それで、何で俺のこと調べてんの?薄気味悪いんだけどな。俺、あんたともさっきの美人とも面識ないよね?」
「君は、会ったことがあるよ、彼に。何年も前だけど」
ユウキはだんだんイライラしてきた。妙に奥歯に物が挟まったような言い方ばかりする。こういう探り合いみたいな会話は好きじゃない。
「じゃあ、俺の名前、言ってみてよ。たぶん人違いだろ。俺はあんたもさっきの奴も知らないもん」
ユウキが挑戦的な目で睨みつけると、月城は少し困った顔をして
「ごめんね。怒らせてしまったのかな。じゃあ君の質問にきちんと答えるよ。君の本名は、飯島和臣(いいじまかずおみ)くん、だよね」
ユウキは目を見開いた。
「あんた……誰なんだ。どうして俺を」
フォークを放り出し立ち上がる。
「その、あんたの友人っていうさっきの男は何者だよ?俺をどうして…」
「落ち着いて」
「答えろよ!どうして俺をここに連れてきた?目的は何だっ」
「ユウキくん、いや、和臣くん。落ち着いてくれ」
「その名前で俺を呼ぶな。いいから質問に答えろ!」
詰め寄るユウキに、月城は動じる様子もなく穏やかに微笑んで
「君が落ち着いてくれるなら、質問に答えるよ。さあ、座って。まだ少しふらついている」
ユウキは無言で月城を睨みつけた。
本当に薄気味悪い。
自分の本名は、こちらではごく僅かの人間しか知らないのだ。わざわざ調べたのなら、理由が、目的があるはずだ。
そして、久我の家から自分をここに連れ出せるということは、この世界にそれなりの力を持っているということか。久我は、自分を好き勝手に弄ぶが、他人に与える時は相手を選ぶ。権力か金。そのどちらかがなければ、久我は簡単に自分を引き渡したりはしない。
ユウキは椅子にドサッと腰をおろした。
「説明しろよ。あんたとさっきの男は何者だ。俺のことをどうして調べた。何故ここに連れてきたんだ。全部、答えろ」
出来るだけ感情を抑えて、ゆっくりと質問する。月城は少しの間、黙って自分を見下ろしていたが、斜め前の椅子をひいて静かに腰をおろすと、テーブルに両肘をついた。
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