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光射す午後に28
3人がマンションに着いて10分もしないうちに、地味なスーツ姿の男が尋ねてきた。黒田だ。念の為に藤堂薫の身辺を見張らせていた1人だった。
「すみません、月城さん。やられました」
「うん。入って」
月城は黒田を招き入れると、さり気なくドアの外を見回してから閉める。
リビングに連れて行くと、樹が黒田に歩み寄った。
「早速、説明を」
「はい」
黒田は樹の質問に答えながら、薫が拉致された時の状況を細かく説明していった。そして、鞄から茶封筒を取り出す。
「これが、男たちと仲間の車の写真ですが……」
樹は手渡された写真をじっと見つめ、こちらに一枚ずつ手渡してくる。
「すぐにプリントしてきましたが…状況把握が遅れて」
黒田の言う通り、写真はどれも肝心の対象が小さすぎてよくわからない。男たちの人数と車種が、辛うじて判別出来る程度だ。
「彼らはこういうことには慣れている。簡単に尻尾は掴ませない」
樹は内心の動揺を抑えて、意気消沈している黒田にそう言って慰めると、こちらを見た。
「月城さん。連絡……とれる?」
「ああ」
月城はポケットからスマホを取り出した。
「たぶん彼らは、こちらからの連絡を待ってるだろう」
月城は目的の登録番号を呼び出すと、スマホを樹に差し出した。
固唾を呑んで見守る3人の前で、樹はコール3回目で出た相手と話し始めた。
「兄さんは、どこ?…………分かった。これからそちらに向かう。場所を教えて。…………いや。それは無理だ。彼は連れて行けない。…………僕だけでは不満かって、ボスに聞いてみて?」
樹の口調は淡々としている。月城は内心、忌々しさに舌打ちしたい気分だった。
和臣の救出はこちらの思惑通り上手くいったのだ。和臣が勝手に病院を抜け出さないように見張るのを黒田に任せて、藤堂薫の方はやはり自分が動くべきだった。
「…………はい、樹です。……ええ。お久しぶりですね」
電話の相手が変わった。
自分の隣で、樹の様子を食い入るように見つめていた和臣が、腕を小突いてくる。
「なあ、相手、誰」
月城は自分の唇に指を押し当て、和臣の囁きを制した。和臣は不満そうに首を竦め、また樹に視線を戻す。
「……いえ、驚いてます。まさかあなたがこちらに来ているとは思っていなかったので。…………はい、彼は病院です。…………いえ。連れて行けません。僕だけではダメですか?…………分かりました。その約束、守ってくださるのであれば。……はい。……はい。そこなら、これから30分後で。……はい、それでは失礼します」
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