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月の光・星の光7

「何か行動を起こす時は、一度冷静になってよく考えるんだよ。目的は何か。それを成し遂げるにはどんな方法があるか。除外すべき事案、考慮すべき配慮。予測出来る障害と、不測の事態が起きた時の対処。大胆な行動力は、それらが全てシュミレーション出来た上で発揮されるべきだ。感情的に思いつきで動いても思う結果は得られない。君は飲み込みの早い優秀な生徒だが……薫くん絡みのことになると、不必要なフィルターがかかってしまうようだね」 朝霧の深みのある落ち着いた声を聞いていると、自覚していなかった自分の稚拙さに気づかされて耳が痛い。 樹は唇を噛み締めた。 「取り引き材料は君自身だけかい?」 「いえ……。例の町工場の案件を……」 朝霧の手が樹の肩をぎゅっと握る。 「そうか。やはりあれを使ったのか」 「……ごめんなさい。もっとよく考えて使うべきでした」 朝霧はゆっくりと首を横に振り 「餌としては悪くない選択だ。蒼葉会のことを持ち出せば、あの男はムキになって食いついてくるだろうからね。だが、時期が悪い。久我は広瀬組のナンバー2の出所を控えていて、ナーバスになっている。いくら美味しい餌でも今は手を出さないよ」 樹は呆気に取られて朝霧の横顔を見上げた。朝霧は日本に戻って来たばかりのはずだ。いつの間にそれだけの情報を入手していたのだろう。 自分の疑問が顔に出ていたのか、朝霧はこちらをちらっと見てにやっと笑い 「情報収集したのは私じゃない。月城くんだ。君の為に裏で動いている彼にも感謝しないとな」 樹は月城の後ろ姿をじっと見つめて、目を伏せた。 そうなのだ。月城は自分が自由に動けるようにと、影でいろいろと尽力してくれている。自分一人では何も出来ない。月城が先に回って配慮してくれているお陰なのだ。 「月城さん。ごめんなさい。ありがとうございます」 「あ……いや。余計なお世話だと君は思うだろうけど……」 樹は慌てて首を横に振った。 「ううん。そんなこと、ない。いつも助けてくれて……ありがとう」 朝霧は樹の肩をぽんぽんっと撫でて 「よし。じゃあ今回の件は後で調整するとして、まずは薫くんに会いに行こうか」 何だか楽しげな朝霧の顔を、樹はじとっと睨んだ。 「なに?その顔は」 「にいさんに……会って何を話すんですか?」 朝霧はふふ…っと笑うと 「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。私は余計なことは言わない。会ってみたいんだ。君の心をそんなにも惹きつける藤堂薫くんって男に、ね」

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